ポジティブになろうと意気込み過ぎるのは逆効果? 最新脳科学からみる“自分の幸せ”

ビジネス

公開日:2020/11/26

『科学的に幸せになれる 脳磨き』(岩崎一郎/サンマーク出版)

 現状に満足できない…。仕事にしろプライベートにしろ、何をやってもいまいちうまく行かないと不満を抱える人は少なくないのかもしれない。ただ、自分を変えられるのは自分だ。
 
 脳の使い方で人生を変えられると語るのは、『科学的に幸せになれる 脳磨き』(岩崎一郎/サンマーク出版)である。本書を手に取りそのエッセンスをつかめば、あなたの毎日が好転するかもしれない。

無理に「ポジティブ」になろうとするのは逆効果

 幸せに生きるということは、多くの人たちにとっての最重要課題だろう。そのせいか、「ポジティブに生きよう」とすすめる本やネットの情報をしばしばみかけるが、果たしてそれは正解なのだろうか? 本書では、そんな風潮を覆すかのような衝撃的な研究結果が示されている。
 
 かつて、アメリカの大学である実験が行われた。69人の被験者を2組に分けたこの実験では、一方のグループのみに「ポジティブな気持ちでいることが成功に繋がる」というレクチャーをして、被験者全員にハッピーエンドの映画と悲しい結末の映画をそれぞれ鑑賞してもらった。
 
 その後、被験者たちの気持ちを調べたところ、一方の「ポジティブな気持ちでいることが成功に繋がる」とレクチャーを受けたグループは、ハッピーエンドの映画を見てもレクチャーを受けなかったグループより30%ほど「ポジティブになりにくくなっている」ことが分かった。

 この理由について、レクチャーを受けたグループの被験者たちが「ポジティブになろう、なろう」とするがあまり、本来であればポジティブに捉えられるはずのハッピーエンドの結末にすら、鈍感になってしまったと本書は分析する。そして、この実験は「幸せになろう」「幸せになりたい」と思うこと自体が、じつは幸せを遠ざけているのではという教訓にもなっている。

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日頃から前向きな気持ちを持てるよう習慣づけたい

 本来、人間は「前向きになること・前向きであること」は苦手だと、本書は解説する。それは、生存本能によって「危険なものなど、自分にとって良くないものをキャッチしたり、物事を悪く捉えようとしたりする」傾向を持っているためで、じつは、安全を脅かされることなく生活できるようになったのは、人類の長い歴史からいえばごく最近ということになる。

 現代ではその傾向が「職場の仲間のあら探しをしたり、お店の人や商品にクレームをつけたりするようなことに発揮されるようになった」と本書は分析するが、そのままの姿勢ではやはり人生は好転しないだろう。

 そこで心がけておきたいのが、先述したように「ポジティブになろう、なろう」と無理に意識するのではなく、それでもなお前向きな気持ちを持つための習慣づくりだ。

 多くの場合、人は「何か良いことがある → 前向きな気持ちになる」というパターンに陥りやすい。しかし、本来はネガティブな情報に目を向けがちな脳の特性から考えるとこれは逆で、日頃から前向きな気持ちを持てるように意識しておくことが前提として必要になる。

 例えば、ささいなことでも自分にとって「できたこと・できていること」に目を向けるのもひとつの方法。反省するにしても「落ち込んで反省をする」か、もしくは自分の良さを認めながら「落ち込まない反省」をするかで物事に対するやる気も変わってくる。とにかく前向きに捉える“クセ”を付けておくことが、満足の行く暮らしを手に入れるための足がかりになるのだ。

 生きていれば、周囲への不平不満もあるかもしれない。しかし、冒頭でも述べたが自分の人生を変えられるのは“自分”しかいない。本書をたよりに、ひとりでも多くの人が自分なりの幸せを手に入れられるよう願いたい。

文=カネコシュウヘイ