心がほっとあたたまる! クリスマス絵本の新定番『ぼうしくんのクリスマスプレゼント』

文芸・カルチャー

公開日:2020/12/1

ぼうしくんのクリスマスプレゼント
『ぼうしくんのクリスマスプレゼント』(新井洋行/KADOKAWA)

 街に飾られたキラキラツリーや、どこかから聴こえる聖夜の歌。クリスマスに華やぐこの気持ち、我が子といっしょに楽しみたいですよね。そんな時こそ絵本の登場です。ここで紹介するのは、クリスマスの贈り物がテーマの絵本『ぼうしくんのクリスマスプレゼント』(新井洋行/KADOKAWA)。クリスマス気分を味わいながら、相手を想う優しい気持ちまでが伝わる1冊です。

動物たちをなぐさめたいぼうしくんは…

 物語の主人公はいつもサンタクロースがかぶっている、あの赤くてフワフワな“ぼうしくん”。冒頭では、そんなぼうしくんがひとりぼっちで困っています。“あわてんぼうのだれかさん”が、ぼうしくんを落としたまま行ってしまったのです。

 そんなぼうしくんの前にうさぎやくまがやってきて、「クリスマスなのにひとりぼっちだし、だれもプレゼントをくれないよ」と悲しそうに泣いています。動物たちをなぐさめたいぼうしくんは、自分のからだをみんなにプレゼントしました。贈り物をもらった動物たちはうれしそう。ところが、次々と贈ったぼうしくんのからだは何もなくなってしまい…。

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“定番”を楽しみながら親子の交流を

 今年のクリスマスは子どもにどんな贈り物をしようかと考えている人も多いのではないでしょうか。本書を読みながら、プレゼントをもらって喜ぶ動物たちに、我が子の笑顔を重ね合わせてしまいました。大切な人の笑顔を思い浮かべながらプレゼントを選ぶのも、贈る側にとっては楽しいひととき。このワクワクする気持ち、我が子にも、いつか誰かに贈り物をするときがきたら味わってもらいたいなと感じます。

 本書には、クリスマスの定番ソング「あわてんぼうのサンタクロース」や「赤鼻のトナカイ」を思い起こさせるシーンや、サンタクロースをのせたソリが夜空へ飛んでいくシーンも。そんな“定番”もクリスマスの楽しみのひとつですよね。

 はじめて目にする光景に、子どもの“なぜ? どうして?”も始まります。「なんでトナカイのお鼻は赤いのかな」「どうしてお空を飛んでいくの?」という質問にありったけの知識で答えながら、「イブには枕元に靴下を置いて、ワクワクしながら眠りについてね…」と、お父さんお母さんが小さなころの思い出ばなしが始まったりして…。本書を読みながら、親子の交流も楽しめそうです。

“プレ・プレゼント”におすすめ!

 クリスマスの伝承には、サンタクロースのモデルになった聖ニコラウスが、貧しい家庭の少女のもとに金貨を贈ったことがクリスマスプレゼントの始まりだとする説もあるそうです。師走で忙しいし大変なときもあるけれど、誰の心にもぽっと明かりが灯り、誰かに優しくしたくなる——そんな温かさがクリスマスにはあります。

 この絵本もまた、読後にほっこり心温まるような1冊。ポップな色使いによるイラストや“ぼうしくん”の親しみやすいキャラクターなど、子どもが手に取りやすい要素もポイントです。

 我が家にもクリスマスにまつわる絵本が何冊かありますが、毎年のようにクリスマスの知識が増していく子どもの成長をながめるのは楽しいものです。だからこそ、本書を子どもに贈るなら、クリスマスの“プレ・プレゼント”にするのがおすすめ。この華やかなシーズンを親子で長〜く楽しめること必至です。

文=麻布たぬ