新規獲得よりも大切なのは「2回目の購入」! サッカー観戦アプリが実践する2回目につながる施策とは

ビジネス

公開日:2020/12/10

マンガでわかる デジタルマーケティング
『マンガでわかる デジタルマーケティング』(西井敏恭:著、桓田楠末・サイドランチ:マンガ/池田書店)

 新型コロナウイルスの影響で広告を抑える動きが続いていたが、徐々にもとに戻りつつある。とくにデジタル広告が堅調だ。凍結されていたプロモーション予算が解除され、これから再びエンジンをかける、という会社は少なくないのではないか。あるいは、対面での訴求がむずかしくなったために、初めてデジタルマーケティングに挑戦するという個人事業主の方もいるだろう。

 今回紹介する『マンガでわかる デジタルマーケティング』(西井敏恭:著、桓田楠末・サイドランチ:マンガ/池田書店)は、デジタルマーケティングの基本的な考え方が学べる本だ。マンガ形式で解説が進んでいくから、「右も左もわからない」まったくの初心者でも心配はいらない。本書のメインターゲットは、メーカーで新しくマーケティング担当者になった人や、店舗の集客にネットを使いたいという個人事業主の方。加えて、直接“マーケティング”と名のつく職種でなくとも、仕事の一部でネットを使う人にもおすすめだ。たとえば、新卒採用を担当する人事の人であれば、採用サイトに人を集める必要がある。そのときのサイト設計や流入口の改善は、デジタルマーケティングの考え方に通ずる。

“F2転換”で継続率UPを目指そう

 デジタルマーケティングのおもしろさは、お客さんのデータを詳細に分析できることだ。IDによって個人の情報がひもづけられているため、そのお客さんがいつ、何回買ったのかを知ることができる。著者によれば、デジタルマーケティングの本質は、こうした情報を駆使しながら「売れ続けるための仕組みづくり」をすること。たくさんの広告費をかけて露出を増やすだけでなく、お客さんが継続的にお金を落としてくれる仕組みをつくる必要がある。

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マンガでわかる デジタルマーケティング p.74

マンガでわかる デジタルマーケティング p.75

 そこで大事になるのが“F2転換”だ。F1=1回目の購入、F2=2回目の購入…と、Fの後の数字は購入の回数を表している。お客さんに継続してもらうポイントは、F1のお客さんをいかにF2に転換できるか。たとえば、F1を獲得するのに割引の施策が有効だったとする。だが、F2転換でも同様の施策が効くとは限らない。なぜなら、お客さんのニーズが違うからだ。

マンガでわかる デジタルマーケティング p.76

マンガでわかる デジタルマーケティング p.77

マンガでわかる デジタルマーケティング p.78

 本書では、サッカー観戦のアプリの例を挙げている。単なる割引チケットではF2への転換率が低かったが、ある工夫をすると継続率が上がったそう。それは、何度も観戦しているお客さんに、友人を無料で招待できるチケットを配布したこと。サッカー観戦において、F2になるかどうかのポイントは、実際に足を運んだときに試合を楽しめるかどうかだ。初めて訪れた人は、招待チケットをくれた詳しい人に解説してもらいながら、サッカー観戦を楽しむことができる。結果、F1のニーズをうまくとらえ、F2に転換できたというわけだ。

マンガでわかる デジタルマーケティング p.116

マンガでわかる デジタルマーケティング p.117

 本書では他にも、サイト改善のための顧客分析の方法や、用途別のSNS広告の使い分けなどを解説。むずかしい知識を詰め込むのではなく、マーケターとして走り始めるための基礎体力をつけてくれる。本書の知識を頭にいれたうえで実際に手を動かし、分析や制作のスキルを身につければ、効率よくマーケターとして成長できるはずだ。「何から勉強すればいいのだろう?」と迷っている人には、本書を最初の1冊にすすめたい。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7