社会現象を巻き起こした大ヒットアニメ、いよいよ結末へ――「『進撃の巨人』The Final Season」スタート!

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更新日:2020/12/9

「進撃の巨人」The Final Season
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

 2009年に「別冊少年マガジン」で連載が始まり、2013年にはアニメ化もされて社会現象を巻き起こした『進撃の巨人』。原作が終盤にさしかかるのとに、12月7日、アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」が始まった。以前の放送は2019年春から夏にかけてだった。ファンにとっては待ちに待った最終章の始まりだと言える。

『進撃の巨人』は物語の細部にまで伏線が張り巡らされている。「『進撃の巨人』The Final Season」も、何気ないように見える場面が後々影響してくるかもしれない。一瞬たりとも目が離せないアニメなのだ。

 第1話は晴れ渡った空に鳥が飛んでいる場面から始まる。

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「おーい」と鳥に呼びかける少年は、かすり傷だらけで地面に寝そべっている。少年の声優は大ヒットアニメ『鬼滅の刃』で主人公の声を担当した大人気声優・花江夏樹(はなえ・なつき)さんだ。

 すぐに周囲の状況が明らかになる。傷を負った大人の兵士たちが倒れ、何かが爆発したような暗い煙がたちこめる。少年がいるのは戦場だったのだ。

 今までこのアニメで登場しなかった人物たちが続々と現れる。倒れていた少年ファルコもそうだ。すぐに彼の兄、ファルコと親しそうな三人の子どもたちが登場する。彼らを含め、戦場の前線にいる兵士たちは、マガトという名前の指揮官から蔑むような口調で「エルディア人」と呼ばれている。

 アニメの3期まで迫りくる巨人と戦っていた本作の主人公エレンやミカサ、アルミン、リヴァイなど調査兵団の兵士たちは姿を見せない。

 子どもたちのひとり、少女ガビが4年続いた戦争が佳境に入っていて、今は勝敗を決める大事な局面であると述べる。彼女は「私たちマーレ」と言った。「マーレ」とは一つの国で、3期までエレンたちがいたところとは異なるようだ。

 子どもたちが自分のことを「戦士候補生」と呼んでいることにも注目したい。

 エレンたちは調査兵団の「兵士」である。「戦士」ではない。ただ、3期までで「自分たちは戦士」と述べていた人物がいる。調査兵団に所属し、エレンの同期として巨人と戦いながら、実は敵だったライナー、ベルトルト、そしてアニだ。彼ら3人はなぜか巨人化できる能力を持っていた。ライナーは「鎧の巨人」、ベルトルトは「超大型巨人」、アニは「女型の巨人」であり、エレンとも戦った。

 アニメ1期でアニは戦いの果てに長い眠りについてしまい、3期でベルトルトは死んだ。残るライナーは、仲間である謎の「獣の巨人」「車力の巨人」に助けられ逃げた。

 1話中盤、ライナーが現れたとき、気づいた人も多いはずだ。ライナーは1期から3期まで、エレンたちを狙っていた敵である。この最終章は、敵の視点から物語が始まっているのだ。

 そもそも「味方」、そして「敵」とは何なのだろうか。

 エレンたちが「善」なら、エレンたちの平和を壊した戦士と呼ばれる巨人たちは「悪」である。しかし戦いに駆り出される4人の子どもを見ていると、とても悪役には見えない。むしろ「エルディア人」として差別されている様子だ。

 3期までを振り返ると、ライナー、ベルトルト、アニは悪役でありながら、彼らの苦しみも描かれていた。ただその苦しみの理由はわからないままだった。

 1話で、ライナーたち「マーレ」軍は敵に勝つ。終盤、賑わう町の中に、ひとりの男性の後ろ姿が映し出される。

 その背中にはどこか見覚えがある。

「『進撃の巨人』The Final Season」はアニメ1期から3期までに加え、この第1話で出てきた伏線がどんどんと回収されていくだろう。最終回まで目が離せない。

文=若林理央