ワンオペ家事&育児に絶望し…苦しんだ末に見つけた「つかれない家族」のヒント

暮らし

公開日:2020/12/11

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ
『ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ』(ハラユキ/講談社)

“「夫」につかれた 「妻」につかれた 「子ども」につかれた 「家事」につかれた 「育児」につかれた 「夫婦」につかれた 「家族」につかれた 「イライラすること」につかれた 「怒る」ことにつかれた 「がまんすること」につかれた 「恨むこと」につかれた 「あきらめること」につかれた”

 もし、あなたが今、家族に対してこんな想いを抱えているのなら、ぜひ手に取ってほしい書籍がある。それが『ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ』(ハラユキ/講談社)だ。

 作者のハラユキさんはフリーランスのイラストレータ―・コミックエッセイスト。会社員の夫が多忙だったため、ずっとワンオペ家事&育児をしてきた。その結果、ストレスと疲労から帯状疱疹ができ、急性胃腸炎となり、家事・育児分担を見直すことに。

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.36

 話し合いの場を設けたり、家事分担表を作ったりと奮闘した結果、次第に夫も家庭のことを自分事として考えてくれるようになった。

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 ところが、その矢先、夫の仕事でスペインのバルセロナへ。初めての海外赴任により、再びワンオペ家事&育児に…。そんな時、作者は現地でさまざまな家族から家庭の話を聞き、興味を持ちはじめ、やがてスペインやイギリスなど、さまざまな国の「家族の形」を取材するようになった。

 取材内容をまとめた記事は、東洋経済オンラインの大人気連載に。連載は現在も継続中で、さまざまな反響や議論を呼んでいる。本作は大幅な加筆・修正を加え、書籍化したもの。作者は苦しんだ実体験や、取材を通して気づいた「つかれない家族」の暮らし方・考え方を教えてくれる。

子育て中でも仲がいいカップルに共通していた「工夫」とは?

 ベストな家族の形は家族構成や性格、居住地によっても異なるため、家事育児分担や家庭内コミュニケーションに正解はない。しかし、作者は子育て中でも仲がいいカップルには6つの共通点があることを発見。本作では5組のカップルの暮らし方を通じ、つかれない家族の共通点を具体的に紹介している。

 例えば、富山県に住むボンベイさんのワンオペ家事&育児術や夫婦仲からは、学ばされることが多い。焼肉チェーンオーナーの夫を持つボンベイさんはひとりで3人の子育てに奮闘しているものの、夫婦仲は良好。時短グッズや食材の宅配サービスなどを活用したり、散らかしてもいい部屋を1室作ったりし、自分を追い込まないように工夫している。

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.143

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.144

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.145

 そんなボンベイさんに対し、夫は一切不満を言わない。職業柄、口を出してしまいそうなので基本的に食事も別。任せる部分には口を出さず、文句を言ってしまいそうなジャンルは自分でやるというのがボンベイさん夫婦の「つかれないコツ」なのだ。

 こうした温かい気遣いは、国際結婚をしたイギリス在住のL夫婦からもうかがえた。L家は自分たちが疲れないことを優先して育児を行っているのだが、個人的にグっと来たのが2人のパートナー論。

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.79

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.80

ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ p.81

 収入のあるほうが決定権を持つ夫婦関係に息苦しさを感じている人は、意外と多いように思う。だが、家事をよくこなすことやお金を多く稼ぐことだけが「いい夫」「いい妻」の条件ではないし、そもそもパートナーは対等な関係であるはず。いつの間にか自分たちが主人や使用人、またはただの同居人のような関係になってはいないかと振り返り、パートナーの価値を改めて考えてみることこそ、つかれない家族になるために一番大切なことなのかもしれない。

 日本ではまだまだ女性に家事や育児の負担がのしかかりやすく、男性ははじめから育児に参加できにくいがゆえに家庭内で孤立してしまいやすい。けれど、各々がパートナーへの認識を変えていけば、家事・育児に対する考えも変化し、国の仕組みそのものも変えていけるはず。家族に疲れないためには、もう一度自分自身に「なぜこの人と結婚したのか」と問いかけ、「今更」を捨てて、歩み寄ってみてほしい。

 ちなみに、本作は男性視点も盛り込まれているため、夫婦一緒に読むのもおすすめ。代理母出産を経て我が子を授かったゲイファミリーの暮らしや、互いへの感謝を忘れない京都の仲良し夫婦のエピソードなど、ここには自分たちの関係を変えるきっかけとなる話がきっとある。ラストには作者宅の変化も描かれているので、そちらも必見だ。

 ぜひ、さまざまな家庭の工夫に触れ、自分たちらしい「つかれない家族の形」を見つけてみてほしい。

文=古川諭香