初体験のトラウマでセックスできなくなった28歳女子が、元凶の元カレと温泉旅館で再会して――!?

マンガ

公開日:2020/12/19

たっぷりのキスからはじめて
『たっぷりのキスからはじめて』(梨花チマキ/集英社)

 初体験、って重要だ。なんであれその後の価値観を決定づける。どんなに美味とされる食材でも最初に食べたものがまずければ二度と手を出そうとは思えないし、他人に対するネガティブな第一印象はそうそう簡単にくつがえらない。それがセックスなら、なおさら。誰かに教わることも、再チャレンジすることも難しいから、「あんまり気持ちよくない」から「気持ちいい」に移行するのが、とくに女性の場合はとても大変だ。

 マンガ『たっぷりのキスからはじめて』(梨花チマキ/集英社)の主人公・ひばりも、そう。大学時代の初体験によるトラウマをひきずり、28歳になった今でもセックスすることができず、せっかく彼氏ができてもフラれてしまう。幸い、マンガ編集者という仕事柄、忙しくて退屈することはないけれど、それでも一生このままだろうかと不安を抱える彼女が、トラウマの原因である元カレと再会してふたたび恋の快楽を味わっていく、大人の少女マンガである。

たっぷりのキスからはじめて

たっぷりのキスからはじめて

 トラウマ、といってもひばりの場合、痛い思いをしたとかひどいことをされたとかではない。あまりの恥ずかしさに耐え切れず途中で気絶したうえ、彼氏を置いて帰ってしまい、そのまま自然消滅してしまったという、どちらかというと「それは彼氏のほうがトラウマでは……?」という過去。まあ、純情で奥手な女子が、はじめてのセックスで乱れた自分に羞恥を覚え、混乱して逃げてしまうというのも分からない話ではないのだが、仕事で泊まった温泉旅館で再会した元カレ・柳は、案の定、ひばり同様にトラウマを背負い、セックスのできない身体になっていた。ひばりと別れてから7年、何をしても、ムスコが反応しないというのだ。贖罪のためにひばりは、彼が“元気”になるためのお手伝いをすることになるのだが……。

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たっぷりのキスからはじめて

たっぷりのキスからはじめて

 柳に触れられるだけで、ひばりはこれまでの不感症が嘘のように敏感に身体が反応してしまう。さらに何度も触れあううち、つきあっていたころのことを思いだして、恋心も一緒に呼び覚まされていく。ようするにひばりは柳のことが好きすぎて、それゆえに自然消滅してしまったことへの後悔が強く、その後どんな相手と出会っても、身体以前に心が反応してくれなかったということなのだろう。でもだからこそ、ひばりの柳への一途さが際立つし、再会のときめきも募っていく。

 一方、柳のそれは残念ながら何をしても無反応。だが、ひばりと一緒に旅館に泊まっているイケメンマンガ家に嫉妬するようなそぶりをみせたり、まんざらでもない様子。このままヨリを戻せるか!? とひばりが浮かれるのも当然だけど、旅館の跡取りたる彼にはどうやら「どうしても不能を治さなくてはならない」事情があるらしい。ただ「好き」なだけでは一緒にいるのが難しい大人の恋は、どう進展していくのか? はたして2人がいろんな意味で結ばれる日はくるのか? ひばりと柳の恋の行方に期待が高まる。

文=立花もも

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▶セックス不感症の28歳マンガ編集者。元カレに会わないと不感症は治らない!?/たっぷりのキスからはじめて①