深い森の奥で思索する…そんな時間を持ちたいあなたに

公開日:2012/7/15

孤独の愉しみ方 森の生活者ソローの叡智

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:服部千佳子 価格:800円

※最新の価格はストアでご確認ください。

著者であるヘンリー・ディヴィッド・ソローなる人物、まったく存じ上げませんでした。が、この本の表紙がなんとも素敵。深い緑の森の苔むす樹木を背景に白文字で『孤独の愉しみ方』と表現されている。このレイアウトだけでもぐぐっと、「緑の癒しを求む」「静寂な気持ちになりたい」というような誰にでもある自然回帰の気持ちを盛り上げてくれます。帯には「150年のロングセラー」と。

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アメリカはマサチューセッツ州に生まれたソロー。ウォールデン湖のほとりに小屋を立てて自給自足の生活をしていた人です。思索に専念していた人、といっても思想家ではなく哲学者に近いでしょうか。かといってその人生学を体系的にまとめる、というわけでもなく淡々と、彼の思索の結果にたどり着く人生のもっとも深遠なテーマをひとつひとつ検証し、彼なりのシンプルさで解決してゆく、そんな問答本のような1冊です。

「生活」に明け暮れるのではなく、ひとりの時間の大半を精神的なものにあて、質素極まりない暮らしをしていた人の言葉はときに鋭く、ときに森に生きる動物のように生き生きと、子供のキラキラする目のように光ります。現代人には到底無理な生活と、精神の高め方。「孤独が1番の贅沢」「簡素に生きる大切さ」「持たない喜び」などなど、ストイックな章立ても、こと都会生活者には惹きこまれるようなキーワード。

そしてこの本が150年も読まれ続けていることを考えると、実は景気がよくても悪くても、経済成長しててもしていなくても、どんな時代も人間が根底で欲しているものは同じ、ということなのかもしれません。1ページずつ、格言のようなメッセージと、その次に小さな解説的に補足されたソローの言葉が続くという構成スタイルも好感度高。読みやすく、シンプルなメッセージがダイレクトに目と心に投げ込まれます。携帯電話で読むのにとても読み心地がいい空間の配置。写真をみる感覚で、森からの言葉を受け取る、そんな読書でした。小旅行に出かけるときなど、読んでいたい本です。


ソローの言葉の中でも印象的なひとつ

その次のページにその言葉についての考察が続く構成

この言葉もずばり

こんな1節も現代では更なる響きを持ち

うーん。とうなずくばかりの言葉がたくさんつまっています (C)ヘンリー・ディヴィッド・ソロー、服部千佳子/イースト・プレス