大人気キャラ冨岡義勇と『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』で大活躍の煉獄杏寿郎が主役の『鬼滅の刃 外伝』が登場!

マンガ

公開日:2020/12/20

鬼滅の刃 外伝
『鬼滅の刃 外伝』(平野稜二:著、吾峠呼世晴:原作/集英社)

 描いたのが原作者ではないという理由で、『鬼滅の刃 外伝』(平野綾二:著、吾峠呼世晴:原作/集英社)を読むのをためらう人がいれば、「そんな心配はいらない」と声をかけたい。作者の平野稜二さんは、『鬼滅の刃』アニメ放送時に『ジャンプ+』で連載され、本作の最後にも載っている4コマ漫画「きめつのあいま!」を描いていて、原作の雰囲気や作風に対する理解が深い。また、原作者の吾峠呼世晴さんご本人も、できあがったネームのチェックや修正をしていたという。完成度の高さは原作と同様だと言っても過言ではないだろう。

 この外伝で主役となるのは、人を食らう鬼を倒す鬼殺隊で最強の「柱」だ。彼らは呼吸を使って技を出し戦う。

 収録作品は二つで4人の柱がメインとなる。

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 原作の主人公竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が鬼殺隊に入るきっかけを作った水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)が主人公、蟲柱・胡蝶しのぶがヒロインの「鬼滅の刃 冨岡義勇外伝」と、大ヒット映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』で主役級の存在感を示した煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)が主人公でその継子(弟子)だった恋柱・甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)がヒロインの「鬼滅の刃 煉獄杏寿郎外伝」である。

「冨岡義勇外伝」の舞台は人食い熊が出るといわれる北の宿場が舞台だ。そこで義勇としのぶはマタギの娘・八重(やえ)と出会う。目の前で父が襲われ、仇を討つために山に入る八重だが、この出来事には鬼が関係していた。

 注目したいのは、自然に放たれる台詞の中に、義勇としのぶの考え方や思いがにじみ出ていることだ。

 例えばこの時点で既にしのぶは両親を鬼に殺され、鬼殺隊に入隊後、最愛の姉も失っている。彼女は心に深い闇を抱えながら、笑みを浮かべてこう言う。

“今迄 一度も人を喰わず
餓死を選ぶ鬼がいれば私は看取ります
慈愛の心で 最期まで”

 しのぶの言葉は原作のあるエピソードに繋がる。

 続く「煉獄杏寿郎外伝」は杏寿郎や蜜璃がまだ柱ではなかった頃から始まる。この二人が師弟関係であることは本編ではあまり描かれなかった。そのため、当時のことが詳しく描かれた本作は非常に貴重だ。

「煉獄杏寿郎外伝」には他の柱たちも登場する。原作ファンには「柱9人が柱になった順番をあてよう」と盛り上がった人たちもいる。その大きなヒントの一つになりそうだ。

 蜜璃の使う呼吸がどうして「恋」なのかも原作だけではわからず不思議だったが、恋の呼吸が生まれた瞬間も「煉獄杏寿郎外伝」で描かれる。

 どちらの物語も謎が解明されていくだけではない。4人の柱の人物像がより浮き彫りになり、読んでから再び本編の漫画を読み返すと新たな気づきも得られるのだ。

 本作と『鬼滅の刃』最終巻(23巻)は同日発売だった。とはいえ2021年も鬼滅ブームは続くだろう。未だ明かされていないエピソードが、今回の外伝のような形で発表される可能性も十分にある。待ちながら今後も『鬼滅の刃』を楽しみたい。

文=若林理央