日本人必読の書、電子文庫で、さらに気軽に

小説・エッセイ

公開日:2012/7/17

三国志 (一)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:吉川英治 価格:702円

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この本を最初に読んだのは、確か中学生ころだったと記憶しています。学校の図書館や学級文庫に必ず含まれている本書。通勤電車を開けてみたら本書を読んでいる人が必ずいるのでは? というほどそれぐらい愛されて、読まれ続けてきた名作です。

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吉川三国志は、中国の三国志を基本にしながらも、その細やかな人物描写や設定を日本人好みにアレンジしています。それゆえ本国の三国志とは一線を画していると言われますが、劉備・関羽・張飛の出会いもいかにも日本人好みなスピードで展開されてゆき、まさに1ページ目から中国の雄大な風景の中に読者をいざなってくれる。母を思う劉備の人物像、悪行を尽くす黄巾賊の非道さ。心底男らしく、武勇伝の主人公たる関羽。始まりから、まるで紙芝居を見ているような明確さで人物も場面も目の前に浮かび上がってくる。ゆったりとしたセリフも、大きな所作も漢文のリズムをほのかに残し、響きのいいことこの上なく。まるで壮大なオーケストラを聴いているかのよう。

作家は、冒頭の序文で、「三国志には詩がある。単に膨大な治乱興亡を記述した戦記軍談の類ではないところに、東洋人の血を大きく博つ一種の諧調と音楽と色彩とがある」と言います。その言葉の織物を、日本語でこれだけ巧みに、オリジナルの風格を損ねずに、しかも読みやすくつむぎ上げたこうした作品、現在の作家ではちょっと見当たりません。子供のころは、大人に「お話」を読んでもらうのが誰でも好きなものですが、父親のあぐらの中に座って、まだ見た事もない遠い国の遠い昔話を語ってもらっているような、「安心感」を読みながら一緒に吸収できるような気がしました。

特筆すべきは読みやすさ。たて27文字程度、横12行というゆったり感は、この作品のよさを助長するだけでなく、携帯電話で抵抗なく読める最大・最小限のコンフォートだと思います。日々の雑事を忘れて、ひととき戦国の時代にトリップする。賢く、勇敢な主人公たちになってみる。国を建てるという壮大なロマンに身をゆだねる。読書って本当に素敵。


貧しい村の母親孝行な一青年。でも、老僧にはわかるんです。彼が人とは違うってことが

張飛の人物像も、なんと好ましく

講談社電子文庫の読みやすさは、他とは群を抜いているかと (C)Eimei Yoshikawa 1940-1946