映画『ジョゼと虎と魚たち』12月25日公開! 田辺聖子の珠玉のラブストーリーがアニメーションでよみがえる

アニメ

公開日:2020/12/22

ジョゼと虎と魚たち

12月25日に公開される映画『ジョゼと虎と魚たち』。
田辺聖子が描く恋愛小説の金字塔として、かつて実写映画化もされた物語が、アニメーション映画になって登場する。
主演声優は、中川大志と清原果耶。
恋をすること、未来に踏み出すこと……
青春の痛みときらめきを描き切る傑作小説は、どのような形でスクリーンに現れるのだろうか。

 恋愛小説の名手・田辺聖子がその真髄を発揮して“完全無欠な幸福”を描いた名短編が、現代の大阪を舞台とした新たな物語へ生まれ変わった。

 恋の喜びもきらめきも痛みも──すべてが詰まった珠玉のラブストーリーだ。

 古びた一軒家で祖母と暮らす車椅子使用者のジョゼは、ある晩、楽しみである散歩の途中で坂道を転げ落ちそうになり、あわやのところを恒夫に助けられる。勤労学生の恒夫に、ジョゼの祖母は「孫娘の相手をしてほしい」というアルバイトを提案。口が悪くて辛らつなジョゼと、そんなジョゼに反発を感じる恒夫だが……。

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ジョゼと虎と魚たち

 やわらかな大阪ことばを駆使して、男女の機微やユーモアを軽やかに綴り、数多くの恋愛小説をものした“浪速のサガン”こと田辺聖子。1984年に発表され、2003年に妻夫木聡・池脇千鶴主演、犬童一心監督で映画化され、恋愛映画の傑作としてたくさんの観客の心に刻まれた物語『ジョゼと虎と魚たち』がこの冬、アニメーション映画になった。

 監督は『おおかみこどもの雨と雪』(12)助監督を経て、TVアニメ『ノラガミ』(14)シリーズが高く評価されたタムラコータロー。脚本を『ストロボ・エッジ』(15)、『滑走路』(20)など様々な青春映画を手がけてきた桑村さや香。今の時代の痛みとリアルを歌うEveによる主題歌『蒼のワルツ』が、物語をより鮮やかに、より切実に彩っている。

ジョゼと虎と魚たち

 足が悪く車椅子がないと動けないジョゼは、大好きな本を読むことと、絵を描くこと、そして空想の世界に身を浸してずっと生きてきた。外の世界には怖いことがたくさんある。そう用心していたはずだったのに、夜道で自分を助けてくれた恒夫はどこか違った。夢に向かってひたむきに努力している恒夫に触発され、ジョゼは少しずつ外の世界へ目を向けてゆく。

 図書館へいって本を借りること。夜ではなく昼間に外出すること。電車に乗って海へいくこと。私たちが普段、当たり前のようにしていることの一つ一つが、ジョゼにとっては大きな勇気が必要な大冒険だ。身体がままならないことの大変さ、常に感じる周囲の視線。障がい者を取り巻く環境をぼかすことなく率直に描きつつ、ジョゼと恒夫の心が近づいていく姿が丁寧に、繊細に展開していく。

ジョゼと虎と魚たち

 魚、水族館、動物園の虎、そして海。原作小説にちりばめられている要素を削ぐことなく活かし、かつ新たな要素も加え、後半以降は原作のさらにその先を目指して物語は進む。この時代を生きているジョゼと恒夫だからこその、彼らの選択と未来。二人の恋の行く末を、ぜひ、見届けてほしい。

文=皆川ちか
(C)2020 Seiko Tanabe / KADOKAWA / Josee Project

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』
公開:2020年12月25日(金)
原作:田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』
監督:タムラコータロー
脚本:桑村さや香
出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn
公式サイト:https://joseetora.jp/