なぜ巨人たちは壁を壊したのか? 彼らの祖国は? 序盤の謎が解明に近づく『進撃の巨人 The Final Season』第2話

アニメ

公開日:2020/12/20

進撃の巨人
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

 第2話で軸になったのは、本作の主人公エレンの同期でありながら、エレンたちの日常を壊した敵「鎧の巨人」だとアニメ2期で判明したライナーだ。アニメ3期でライナーは仲間のベルトルトを失った。パラディ島を出て祖国に帰るが、その後4年間、巨人化できる戦士として、戦いに明け暮れている。

 第1話はライナーの祖国「マーレ」と外国との戦争が迫力たっぷりに描かれていた。うってかわって第2話は会話中心の場面が多い。戦争が終わってもライナーはずっと陰鬱な表情を浮かべている。

 周囲の人間は、みなパラディ島にいる人間を悪魔だと信じ込んでいる。しかしライナーは仲間のベルトルト(超大型巨人)、アニ(女型巨人)と共に島に潜入するうちに、エレンたちを仲間として意識するようになっていた。彼らを裏切った苦しみに加えて、4年前、パラディ島で「相棒」ベルトルトを失い、消息不明になっているアニを置いてきた罪悪感もライナーを苛んでいる。

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 そしてライナーの「戦士」としての任期はもうすぐ終わる。

『進撃の巨人』では知性のない巨人たちの他に、高い戦闘能力を持つ九つの知性のある巨人がいる。一人の人間が、永遠に知性のある巨人になれるわけではない。能力を次の戦士に受け継いでもらうため、任期をまっとうする前に自分を戦士候補生に食べさせるのだ。巨人化できる人種はすべてエルディア人と呼ばれ、マーレでは被差別民として暮らしている。だが巨人の能力を受け継いで「名誉マーレ人」になれば、安定した生活が保証される。

 現在の戦士候補生には12歳の少女ガビもいる。ライナーのいとこだ。

 自分と同じ人種とはいえ、パラディ島にいるエルディア人は「島に逃げた悪魔の子孫」と聞かされ育ったガビは、鎧の巨人の継承者に選ばれることを目指して訓練に明け暮れている。

 ライナー、ベルトルト、アニ、ガビ…『進撃の巨人』の登場人物はドイツ人名が多い。マーレはパラディ島よりも文明が進んでいて、戦前から戦後にかけてのヨーロッパをほうふつとさせる。

 第2話放送後、SNSでは登場人物の動きも話題になった。登場人物たちの会話の最中なのに動きが気になってしまうことに対しては賛否両論だったが「ヨーロッパ映画の人物の動きもこんな感じだ」という意見もあり、はっとした。

 アニメ『進撃の巨人』が始まった1期のことを思い出してみる。序盤、パラディ島を囲う大きな壁が壊され超大型巨人が顔をのぞかせた。子どもだったエレンや幼なじみのミカサ、アルミンはそれを見て戦慄した。直後に鎧の巨人が壁を砕き、続々と知性を持たない巨人が壁の中に入り人々を食らい殺した。そこからパラディ島の悲劇は始まったのだ。

 だが、マーレに住むエルディア人の悲劇はもっと前から始まっていた。

 物語の始まりのあの日、どうしてライナーとベルトルトは巨人化して壁を壊したのか。アニはそのときどこにいたのか。長い間、視聴者が感じていた謎はまもなく明かされるのかもしれない。

文=若林理央