地質学的に「東北地方太平洋沖地震」のメカニズムを検証! 徹底調査で、知られざる地球の歴史をひもとく

スポーツ・科学

公開日:2020/12/24

カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く
『カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く』(平朝彦、国立研究開発法人 海洋研究開発機構/講談社)

 小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球と火星の間を公転する小惑星リュウグウの岩石サンプルを持ち帰って来たことが話題となっている。宇宙へと到達している人類だが、未だ地殻の下にあるマントルへは至っていない。まだ誰もマントルを見たことがないのだ。

 宇宙よりも身近な地球には、まだまだ解明されていない謎がたくさんある。そんな興味を掻き立てるのが、地球科学の話題がギッチリと詰まった『カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く』(平朝彦、国立研究開発法人 海洋研究開発機構/講談社)だ。著者は地質学者の平朝彦先生。海洋研究や地球物理学研究のために設置された国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の理事長を2012~19年まで務め(現在は顧問)た、海洋地質学・地球進化論を専門とする平先生が、15年以上前から構想を練っていたというだけあり、圧倒的情報量を誇っている。

カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く p20-21

 本書は地球上の大陸や日本列島がどう生まれ、どう変わってきたのか、深海から山のてっぺんまでを網羅した、オールカラーの写真や図版が豊富な地球科学を地質・地形・地層の見地からの最新情報によって解説するページと、取り外して使える巻末の別冊用語解説がセットになっており、さらに掲載されている写真や図版、ミニコラムにはQRコードが付いていて、スマホやタブレットで読み込むことで関連動画や写真を見たり、より詳細な内容のコラムを読むことができる。読書をしながら水深1140メートルの海底にあるチムニーや複雑な南海トラフの海底地形、ハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口など、たくさんの場所を観察できるのだ。このように本書だけでも相当な情報量だが、ネット上で関連情報を補うことで、さらに深いところまで掘り下げられるのが本書の特徴となっている。さらに第6章「地質学的に見た東北地方太平洋沖地震・津波」では、海底探査などから得たデータや詳細な調査から地震と津波のメカニズムを解説、潜水調査船「しんかい6500」による地震後の海底にできた地割れも動画で見ることができる。発生から10年を迎える2021年、今一度思いを新たにしたいパートとなっている。

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カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く p48-49

カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く p98-99

カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く p140-141

 ちなみに本書を読むにはある程度の専門的な知識が必要となるが、専門用語を解説する別冊と突き合わせながらコツコツと読み進めれば、地球という星、日本という土地についての知見が深まっていくことは間違いない。そして平先生は「はじめに 観察の重要性」で「私たちは、今、地球史における最大の規模の変化をこの惑星に引き起こしている」と指摘、さらに続けてこう記している。

地球創成期に、惑星どうしの衝突による月の形成、原始生命の誕生、光合成の発達による酸素大気の発生、隕石の衝突による恐竜の絶滅など、地球史では劇的なイベントが幾つも起こった。しかし、人間(ホモ・サピエンス)の発展が、ここ100年ほどの間に地球に与えてきたインパクトは、質的に全く異なるものであり、新しい地質時代の到来(これを人新世という)として理解されつつある。これから、地球と私たちの未来に何が起こるのか、新たな俯瞰的な科学の視点で見直す必要が生じている。そして、私たちの住処である地球とは一体どういう星なのか、深く理解することが今、強く求められている。

 地球上のすべての生物(植物含む)に対し、人間が作ってきた建物や道路の舗装、自動車、服、ペットボトルといった人工物は20世紀に入ってから凄まじい勢いで増え続け、総重量は現在ほぼ同じ重さにまで増えている。2020年内には人工物が生物を上回り、2040年には2倍の重さに達するという試算もある。人間が地球に及ぼす影響がこれまでにないほど高まった「人新世」の今、本書で地球という星を深く知ることは、重要性が増すSDGsや、自然を守っていくための新たなアイデアを生み出す一助となるであろう。

文=成田全(ナリタタモツ)