コロナ鬱を吹き飛ばせ! 笑って楽しめる「都市伝説」の魅力で、暗い世相に活力を

文芸・カルチャー

公開日:2021/1/23

最新版「都市伝説」大全ヤバすぎDEATH!2020-21スペシャル
『最新版「都市伝説」大全ヤバすぎDEATH!2020-21スペシャル』(「噂の真相」を究明する会/宝島社)

 読者の皆さんは「新型コロナはフェイクだ」もしくは「米大統領選は不正が横行している」などといった噂話を聞いたことがあるだろうか。勿論、それらの話自体デタラメに過ぎないが、一部の支持者から根強く「信奉」されているのもまた事実だ。不安が先行しやすい昨今では、このような噂話が横行しやすいのか。しかし今、それらの愚論を笑い飛ばす一冊が登場した。

『最新版「都市伝説」大全ヤバすぎDEATH! 2020-21スペシャル』(「噂の真相」を究明する会/宝島社)は、そのタイトル通り「都市伝説」を多岐にわたり紹介している。本書は【都市伝説とは「思わず誰かに教えたくなる」ような面白話にこそ、その本質がある】と定めたのが特徴。かつて流行した「口裂け女」や「人面犬」といった怖い噂話ではないため、笑いながら考えさせられる一冊だ。

菅政権は目玉の「ワニ大臣」で「100日後に死ぬ政権」

 本書で取り上げられたネタはぶっ飛んだものばかりだが、いきなり脱力させられるネタだ。平井卓也デジタル改革担当大臣が委員会の審議中にタブレットで「ワニ動画」を見ていた話題を覚えているだろうか。それに、ツイッターで公開されて話題となったものの、グッズ展開に批判が集まったマンガ「100日後に死ぬワニ」を結び付けたのだ。確かに平井氏は大手広告代理店「電通」出身だし、グッズ展開も「電通」の主導によるものだったが、強引すぎる印象。

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小池百合子都知事が五輪の開会式で「ルイージ」姿で登場

 2016年リオデジャネイロ五輪閉会式で、当時の安倍首相が「任天堂」のキャラクター「マリオ」の姿で登場。そこで東京五輪ではマリオの弟である「ルイージ」の姿で小池都知事が登場するという、実にのんきな噂。ただ、なぜ菅首相ではなく小池都知事? やはり女性である小池知事のほうが華があるとの後押しがあるらしい。現状では、実績が残せていないともいわれる知事だけに、五輪成功を印象付けるためにも、案外、実現の可能性も? あくまで、開催されればの話ではあるが。

 しかし、笑い飛ばせない昨今の情勢もある。それが米国を中心に渦巻く「陰謀論」だ。大統領選において、様々な陰謀論が飛び交い、日本でもSNSを中心に拡散されている。本来、陰謀論と都市伝説は水と油のように違うものと本書は指摘。陰謀論は「事実かもしれない」ことで広まるといわれる。相手を徹底的な悪として定義しており、広める側の「正義感」を満たすのに格好の材料となっている。それに対し、都市伝説は「ウソ」だとわかっていても「面白い」から広まっていくのが基本。

 都市伝説とは信奉するものではなく楽しむものである。ましてや自分と異なる相手を貶めるために用いるものではない。思い出してほしい、口裂け女や人面犬の噂に怖がりつつも惹かれていった、あの当時の感覚を。SNSで簡単に真偽不明の情報が拡散される昨今だが、冷静に見極めるためにも、本書で笑いながら耐性を身に着けてほしい。ネットでも書籍でも陰謀論を論破する情報はたくさんあるのだから、それらもよい参考になるだろう。

文=犬山しんのすけ