新型コロナウイルスのワクチン接種開始に世界は歓喜! でも、そもそもワクチンとは一体ナニ?

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公開日:2021/1/17

感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた
『感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた』(さーたり、中山哲夫:著/KADOKAWA)

 海外では新型コロナウイルスのワクチンが承認され、医療関係者などを中心に接種が始まっている。朗報ではあるのだが、一方でワクチンの治験が十分ではなく、安全性への不安が指摘されているのも事実だ。もちろんそれは正しい反応だが、中には新型コロナのワクチンというだけで「得体の知れないもの」と考えている向きもあるかもしれない。そういった感情論に対しては、できるだけ正しい知識というもので不安を解消していく必要があろう。『感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた』(さーたり、中山哲夫:著/KADOKAWA)は、感染症とは、ワクチンとはいかなるものかを専門家の知識と分かりやすい漫画で解説してくれる。

感染症とは何か?

 本書によれば、感染症とは「細菌、ウイルス、真菌(カビ)、原虫(寄生虫)がヒトの体内に侵入することで症状を起こすようになる」ものであるという。もちろん原因によってその症状はさまざまで、マラリア原虫が寄生して発症する「マラリア」や、コレラ菌による「コレラ」などがよく知られる。ちなみに新型コロナウイルスはその名の通りウイルスが原因で発症するが、ウイルスというのは細菌や真菌と違って自ら増殖することはできない。だからヒトの細胞に感染することで細胞の代謝機能を拝借して増殖する。つまりウイルスとは、生物的な部分と非生物的な部分を併せ持つ「生命機能を持った高分子集合体」だということだ。

ワクチンとは何か?

 人間に細菌などの病原体が侵入すると、マクロファージなどの細胞によって捕食される。これを「自然免疫」という。一方でキラーT細胞など、一度侵入した病原体の情報から抗体を作って対応することを「獲得免疫」と呼ぶ。ワクチンとは、このような免疫を誘導するためのものなのだ。ワクチンは大きく分けて以下の2種類がある。

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【生ワクチン】
弱毒化した病原体そのものを軽く感染させる。メリットは価格が安く、長持ちで強い免疫性があること。デメリットは免疫低下していると打てず、体内で増えるので発熱したりする。

【不活化ワクチン】
不活化したウイルスや成分を入れる。メリットはアナフィラキシーショックなどの全身反応が少ないこと。デメリットは価格が高く、効果が短いので複数回の接種が必要になること。

新型コロナウイルスとは何か?

 コロナウイルスの先祖は1万年前から存在していたといわれる。コロナウイルスの表面には、免疫反応を引き起こす物質=抗原が存在する突起があり、これが太陽のコロナ(太陽の外側に淡く広がる大気)に似ているのが名前の由来。、新型コロナは「COVID-19」とも呼ばれるが、新型というのは抗原が異なるからで、従来の抗体は効き目がない。過去にもコロナウイルス感染症は流行しており、「SARS」や「MERS」という名を聞いたことのある人も多いだろう。飛沫感染を防ぐためのマスク着用や、接触感染を減らすための手洗いや消毒が奨励されている。

 本書によれば、感染症のワクチン接種には、日本は非常に消極的だという。理由は1992年に裁判で、ワクチン接種後1ヶ月以内に起きたものは、科学的に立証されなくても「副反応」とされる判決が出たからだ。これにより訴訟を恐れた国は、ワクチンの導入や定期接種に消極的になってしまったというのだ。かつて流行した「天然痘」のワクチンである種痘の普及に尽力した楢林宗健は「予防医学は報われない」と語ったという。発症した病気の対処ではなく予防なので効果が見えづらく、理解も得られにくいのである。見えないウイルスに対する不安や恐怖が、安易にデマを広めてしまうこともある。だからこそ、「正しく知って正しく恐れる」という姿勢が大事だと本書を読んで感じた次第だ。

文=木谷誠

この記事で紹介した書籍ほか

感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784040649962