釣った魚は極上に食す! ガール・ミーツ・ガールの釣り×料理漫画『カワセミさんの釣りごはん』がおもしろい!

マンガ

公開日:2021/1/3

カワセミさんの釣りごはん
『カワセミさんの釣りごはん』(匡乃下キヨマサ/双葉社)

 三密を避けやすいアウトドアの人気が高まっているらしい。釣り人気も目立ち、シーズンの夏秋にはビギナーの釣り人がどっと増えたとか。釣りといえば、特に海釣りでは「キャッチ&リリース」vs.「キャッチ&イート」の議論が湧き上がる。つまり、釣った魚を逃がすのか、食べるのか。どちらにも言い分はあるが、決着はつけようがない。

 さて、知る人ぞ知るコミック『カワセミさんの釣りごはん』(匡乃下キヨマサ/双葉社)が面白い。ボーイッシュでガサツな釣り好きの女子高生・ミサゴと、主人公である人見知りで料理好きな女子高生・カワセミが出会い、釣った魚を料理して食べるガール・ミーツ・ガールなコミックだ。釣りにパラメーターを全振りしたミサゴと、料理に特化したカワセミが強みを生かし合い、最高に美味しい魚料理を読者に披露する。釣り方、料理の仕方のノウハウ本としても重宝するし、青春友情ストーリーとしても心温められるおトクさとなっている。

 2021年1月12日の3巻発売の前に、本記事では1、2巻のストーリーと魅力をかいつまんで紹介したい。

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 東京から田舎の高校に転校したカワセミは、持ち前の人見知りから、やはり転校先でもぼっちに。ところが、カワセミがヤンキーと恐れていたミサゴに半ば拉致されて、2人は山奥へ。釣りビギナーのカワセミは、ヤマメ釣りを一緒にすることに。

 ストーリーの中で、ミャク釣りの仕掛け、エサ、釣り方などの説明があり、エサのカワゲラを触れないカワセミはイクラを使う。釣ったヤマメは、その場で調理。意外にも血が苦手で料理ができないミサゴを制して、料理凶のカワセミはリミッターを振り切って腕をふるう。孤高なミサゴ、極度に控えめなカワセミはお互いに友達ができない共通項をもっているがゆえに分かり合え、認め合えるところがあり、仲を深めていく。強火の遠火で40分ほど焼いたヤマメの串焼きは「ひと口かじるだけで肉汁がたっぷり出て」「甘くてホロホロ焼き芋みたい」と、美味しそうな描写にお腹が鳴る。

 次に2人が出掛けたのは、ニジマス釣り。ヤマメのときにはなかったスキレット(アウトドア用の鋳鉄製フライパン)があるということで、このときのカワセミはムニエルをふるまう。道具の使い方、調理の仕方など、アウトドア好きの読者も参考になるはず。釣り好きな読者なら、ヤマメを釣りたいのにウグイにエサを取られるもどかしさなど、「それな」のシーン連発必至だ。

 カワセミはさらにバス釣り(もちろん食べる)、コイ釣り、そして海釣りを経て、釣れる魚種と料理のバリエーションを広げていく。海釣りは様々な魚種が狙えるが、2巻までではアジ、サバ、コチ、イサキくらいしか登場しないので、これからどんな大物やユニークな魚種を釣り上げていくのか楽しみだ。

 ちなみに、本書には、元ネタありか? と思われる描写がところどころに転がっている。「ここは、もしかして…」と探してみるのも一興だ。いくつもの楽しみ方ができる極上の本書を、味わい尽くしてほしい。

文=ルートつつみ(@root223)