ひと時の平和を味わうライナーたちに忍び寄る影 少年ファルコに近づく長髪の男の正体は? アニメ「進撃の巨人」第4話

アニメ

公開日:2020/12/31

進撃の巨人
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

 戦士候補生の少年ファルコが、戦争で負傷した長髪の男に頼まれて手紙を投函する。この手紙は何なのだろうか? 長髪の男は誰なのだろうか? 謎を残したままオープニングテーマが流れる。

『進撃の巨人 The Final Season』のオープニングテーマを歌うのは「神聖かまってちゃん」だ。画面に流れる絵と共に、不穏な雰囲気を漂わせながら心地よく耳に響く歌で、これを見ながら今後の展開を予想する視聴者も多いだろう。

 第4話は序盤の謎の男の存在感がじょじょに増していく。並行して全世界でエルディア人が受けている差別、エルディア人でありながらその差別を受けることなく裕福に暮らしているダイバー家、ライナーたちの後継となるべく訓練に励んでいる戦士候補生の子どもたちの姿が描かれる。第2話と同様に戦闘シーンはない。

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 第2話、第3話で主人公のような立場だったライナーの出番は少なくなる。しかしパラディ島へ向かった戦士四人のうち、たった一人マーレに帰ってきたライナーはずっと辛そうな表情を浮かべている。

 マーレに帰ってこられなかった戦士三人のうち、マルセルは、パラディ島に渡るも壁にたどりつく前にライナーをかばって死に、「相棒」と呼んでいたベルトルトも四年前にエレンやアルミンたちと戦って死んだ。アニは生死不明のままだ。そして、パラディ島で共に訓練に励んだ同期たちを裏切ったという事実もライナーの苦悩を深めている。

 一方で戦士候補生の子どもたち四人は、訓練に励みながらも無邪気で、ライナーは彼らに未来への希望を見出しているように思える。ライナーのいとこで「鎧の巨人」を受け継ぐことを強く望むガビ、ガビを守るため彼女を巨人にさせたくないファルコ、クールで無口なゾフィア、冷静でありながら時に激しい一面を見せるウド。原作以上にアニメではゾフィアはアニ、ウドはベルトルトに似せて描かれているように思える。

 第4話を見て物語が複雑化したと感じる視聴者もいるかもしれない。3期まで名前すら出なかったダイバー家当主の登場、ダイバー家が受け継いでいる「戦鎚(せんつい)の巨人」、マーレと他国の関係など新しい情報がもりだくさんである。第4話で物語の因果関係がわからなくても、待ってみてほしい。『進撃の巨人』を見る楽しみの一つは、ちりばめられた伏線や謎が、後になってどんどんと明らかになっていくことだからだ。

 第4話の終盤、エルディア人の収容区で祭りが始まり、戦士候補生の子どもたちははしゃぐ。祭りは平和を象徴しているようだ。そんな中、ライナーは戦士候補生の少年ファルコに案内されて地下室に行く。そこである人物と再会する。ライナーが名前を呼んだとたん、先ほどまで描かれていた平和が嵐の前の静けさであったかのように第4話は幕を閉じる。不穏で謎めいたオープニングテーマの真意が、どんどんと本編に近づいてきている。

 第4話は2020年最後のエピソードでもあった。2021年最初のエピソードの第5話は、間違いなく『進撃の巨人 The Final Season』の転換点になるだろう。

文=若林理央