交際相手の選び方も授業で! 女子校あるある満載の「女子校研究エッセイ」

文芸・カルチャー

公開日:2021/1/11

女子校礼讃
『女子校礼讃』(辛酸なめ子/中央公論新社)

 学生の頃、女子校に通っている友人を羨ましく思うことがあった。多感な時期だからこそ、「男子から選ばれるor選ばれない問題」に一喜一憂しなくてもいい学校生活に魅力を感じたのだ。

 そんな遠い記憶を思い出させてくれたのが、『女子校礼讃』(辛酸なめ子/中央公論新社)。どうやら女子校は幼き日の自分が想像していた以上に魅力的で、奥深い世界であるようだ。

 本書は、読売新聞オンラインの人気連載を書籍化したもの。自身だけでなく、祖母や母、妹も女子校出身者である著者がさまざまな女子校の在校生や卒業生にインタビューし、個性豊かな学校生活を紹介している。

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某カトリック系お嬢様校の卒業生が忘れられない「伝説の授業」

 共学出身の筆者は正直、学校の授業でワクワクしたことがない。だが、本書には女子校ならではインパクト大な授業が記されており、驚いた。

 中でも、印象深かったのが、某カトリック系のお嬢様学校を卒業したTさんの話。Tさんが通っていた学校では高校3年生になると、修道女の校長先生が授業を受け持ってくれたそう。科目名は宗教だったが、実際の内容は独自のものだった。

 特に衝撃的なのが、高校生活の最後、巣立って行く女子たちに対して行われた「どういう男性を選び、付き合っていくべきか」という深い授業。校長先生は黒板に力強く「1、家柄、2、収入、3、人柄」と記したという。

 高校3年生の女子に驚きを与えたこの教えは今でも、同窓会で話題になるほど。「伝説の授業」として、彼女たちの胸に刻まれている。

 他にも、校長先生は宮家に嫁いだもののしきたりが大変で、姑との関係に悩んでしまった人の話や、医療ミスをした医者の夫から一緒に死のうと言われた卒業生のエピソードなど、ワイドショー的な話題を用いた授業も行ったそう。もしかしたらこの授業には、一見幸せになれそうに思えることでも用心しなければならないという人生の教えが込められていたのかもしれない。

 5教科とは違った思考力を養えそうなこの授業。一度、受けてみたいと思ってしまう。

雙葉では「靴ひも」が第2ボタンの代わりに!

 女子校では同性の先輩に憧れるという文化もあるよう。著者も、在学中は、憧れの先輩が部活を引退する時に花や手紙を贈ったり、バレンタインにチョコを渡したりと、ピュアなときめきを大切にしていた。

 そんな微笑ましい文化は名門私立女子校の雙葉にも存在しているのだが、こちらではなんと後輩が、第2ボタンの代わりに好きな先輩の靴ひもを貰うのが通例となっている。

 後輩にとって、靴ひもを貰いに行くことは告白を意味する。そのため、3月になると緊張しながら好きな先輩に予約をしに行くのだそう。そして、それを受けた先輩は4月に渡すというのが、20年以上前から続く伝統となっている。

 なお、4本の靴ひもがすべて予約済みになったモテ先輩はわざわざ新しい靴ひもを買い、後輩にあげることも。1番人気は上履きの靴ひもだが、品切れの場合は体育シューズの靴ひもになるのだという。

 学年ごとに靴ひもの色が違い、進級するたびにカラーが変わる雙葉ならではの、この習わし。つい、他の女子校にはどんなメモリアルイベントがあるのかも気になってしまう。

 本書には他にも、広島女学院や東京女学館、慶応義塾女子、神戸女学院、白百合学園、同志社女子などなど有名女子校の知られざる内情がぎっしり。海外の女子校事情や校内イベントなどに実際に参加して綴った「潜入記」も要チェック。読んでいるうちに、著者の女子校愛が伝染し、なんとも言えない気持ちにもなる。

 女子校出身者には共感、共学出身者には驚きを与える本書は、女子校研究の集大成ともいえる作品だ。

文=古川諭香

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