おうちコーヒーを美味しく淹れたい! 世界的バリスタが基本のきから教える幸せなコーヒーの楽しみ方

暮らし

更新日:2021/1/13

淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし
『淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし』(丸山珈琲 鈴木樹:監修/池田書店)

 昨年から引き続き推進されている「新しい生活様式」で、自宅で過ごす時間が長くなった人も多いはず。ただでさえ冬は家の中にこもる時間が長くなる季節。おうち時間を豊かなものにするためには、日常のささやかな幸せを積み重ねていくことが大切だ。自分の好みにあったコーヒーを淹れ、その香りに満たされて過ごすひとときは、そんな小さな幸せのひとつにぴったり。

 そこで、コーヒーの入門書としてオススメしたいのが『淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし』(丸山珈琲 鈴木樹:監修/池田書店)だ。本書は、2017年にワールド・バリスタ・チャンピオンシップで準優勝を獲得した鈴木樹さんが監修。鈴木さんは、スペシャルティコーヒーの専門店として草分け的存在である丸山珈琲でバリスタとして活躍し、商品企画開発部部長もつとめている人物だ。

 コーヒー初心者としては、コーヒー豆を買う、道具を揃えるなど、家でコーヒーを淹れることになんとなくハードルを感じがち。さらに「スペシャルティ」「COE」など、聞いたことがあるけれどはっきりよくわからない用語も多数ある。本書にはそんな専門用語の解説はもちろん、コーヒーの歴史から自分好みの味を見つけるためのフレーバーの解説、道具や淹れ方、さらにはアレンジレシピやフードペアリングまで、コーヒーの楽しみ方があらゆる角度からぎゅぎゅっと網羅されている。

advertisement

「よっしゃ家でコーヒー淹れてみるか!」と突然やる気になったときに、まず悩むのが、やはりどんなコーヒーを選んだらいいのか? ということ。特に、豆の焙煎度合いやフレーバーはなかなかとっつきにくい印象がある。本書では、イラストや比較写真付きで味の傾向がわかりやすく掲載されている。

 フレーバーについては、7種類あるうちから自分の好みの傾向を見つけられるチャートが用意されており、豆を選ぶときのヒントになりそうだ。ちなみにわたしは浅煎りで果実感があり香りがよいもの……と選んでいき、フローラルまたはアフリカという結果になった。フローラルの代表的な豆はグアテマラやペルー、アフリカはケニアやエチオピアだそう。実際に豆を買うとき、コーヒー専門店で店員さんに相談するときにも、好みの味を自分であらかじめ把握しておくとスムーズだろう。

淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし P26-27

淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし P46-47

 コーヒーを淹れるには道具も必要だ。しかし自分にも経験があるのだが、一番メジャーなペーパードリップ式の道具にしても、なぜか形が色々ある。台形のものをよく見るけれど、こっちは円錐形だし、こっちの上下つながっている風のやつ(ケメックス)はていねいな暮らしをしているオシャレ写真でよく見る気がする……など、ドリッパーやフィルターの形もメーカーで微妙に違うのだ。本書はそのあたりもぬかりない。イラストで各道具の特徴がまとめられているばかりか、さらにドリッパーごとの淹れ方のコツも写真付きで丁寧な解説がなされている。

淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし P78-79

淹れる・選ぶ・楽しむ コーヒーのある暮らし P106-107

 また、淹れ方や保存方法など実用的な知識はもちろんのこと、コーヒーの豆知識(豆だけに)も豊富に収録されており、読み物としてもじゅうぶん楽しめる。特に興味深かったのが、缶コーヒーが日本発祥だったというコラム。缶コーヒーは1969年にUCCの創業者である上島忠雄氏が世界で初めて考案したものだったそうだ。

 新型コロナウイルスの影響により、昨年の春からわたしたちはそれまでよりずっと自宅で過ごす時間が増えた。それは、監修者の鈴木さんも例外ではなかった。しかしそこで改めてコーヒーの持つパワーを感じたという。

コーヒーを淹れること、飲むことで心がほぐれ、活力がチャージされます。いつも飲むコーヒーが美味しいだけで、幸せが感じられます。そしてこの幸せは、もっと多くの方と分かち合えるものと信じています。

 オンオフなく自宅にいるときこそ、コーヒーを淹れるなどのちょっとした作業が心をほぐしてくれることもある。くつろぎたいとき、気持ちをリフレッシュしたいとき、コーヒーのお供に置いておきたい1冊である。

文=本宮丈子