生と死、心、時間、美。全部ここにある
公開日:2012/7/19
みなさんはどうしても眠ってはならない時、どうするでしょうか。長時間の運転だったり、受験勉強だったり、電子書籍のレビューを書いている時だったり…。ガムを噛む、コーヒーを飲むとか、顔を洗うとかが一般的ですが、最近ではレッドブル等のエナジー飲料も主流です。ドリンク剤が本当に効くのかは謎ですが、単なるプラシーボ効果だという説も聞いたことがあります。偽薬効果とも言いますが、思い込みによる心理効果は意外にも強力で、身体に薬と同じ改善が現れたりする事もあるそうです。逆の効果も然りで、とある実験では、心理的暗示によってショック死したケースもあるのだとか…。
さて、そんな不可思議な部分の多い人間心理ですが、本短編集1編にて、ポーはこれに関した素朴な疑問を扱っています。
―――逆はどうなのか、と。
例えば、今まさに死にゆく人に催眠術を施したらどうなると思いますか?
短編「ヴァルドマール氏の死の真相」では、そんな心理学者の素朴な疑問が描かれています。
確かに非常に気になる所。死なせることができるなら、死なせない事ができても不思議ではありません。非人道的というよりは、冒涜的な実験かもしれませんが、そう思いつつとても気になります。
幸か不幸か、死にながら生きるヴァルドマール氏。生きた屍霊、ゾンビはもはやありふれた存在ですが、そういったものとはまた一線を画す様相で実に不気味です。短編集の中でも特に短い作品であるにも関わらず、生と死、果ては時間といった概念までをぶった斬るポー。文面からジワジワと滲み出る恐怖と相俟って、とっても妙な読後感です。
食べてはいけない物を好奇心で口にいれてしまうような背徳感と明らかに毒を喰ってる昂揚感というかなんというか…。怖がりつつも、ついついページを捲ってしまうので不思議なものです。
もちろんトーンの明るい作品もあります
これもオススメ。ショートフィルムっぽいです
でもやっぱりこれ。かなり短いですがよくできてます!