何気なく手に入れたぬいぐるみが美形王子に変身!? 社畜とぬいの同居コメディ!

マンガ

更新日:2021/1/16

ぬいパパ 成人男子がぬいぐるみのパパになる話
『ぬいパパ 成人男子がぬいぐるみのパパになる話』(灯乃モト/芳文社)

 仕事で疲れて帰宅したとき、何か辛いことがあったとき、誰かが待っていてくれるのはやっぱりほっとするし嬉しいもの。とはいえ1人暮らしをしている人も多いし、ペット禁止のマンションも多い…。そんな中で安定して癒しをくれるのが、ぬいぐるみの存在。近年はアニメなどのキャラクターを模したぬいぐるみも多く、お手軽に推しのキャラクターを3次元に降臨させることができるということで絶大な人気を誇っている。

 でももしそのぬいぐるみが人に変身したら――。『ぬいパパ 成人男子がぬいぐるみのパパになる話』(灯乃モト/芳文社)は、酔った勢いで手に入れたぬいぐるみが美形男子に変身してしまうという社畜とぬいぐるみの同居コメディ。

 物語は、社畜サラリーマンである主人公・大枝国丸が、残業帰りに見つけたゲームセンターであるぬいぐるみをゲットするところから始まる。そのぬいぐるみは何のキャラクターかも分からない、しかもパンイチの男の形をしたぬいぐるみ。国丸は酔った勢いで3000円も使ってしまったものの、久々のUFOキャッチャーを堪能して満足していたのだが。自宅のベッドで仰向けに寝転がって眺めていたところ、ふいに手を放して口元に落としてしまう。そしてぬいぐるみと唇が触れた瞬間、ぬいぐるみは美形男子へと変貌!

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 そのぬいぐるみはヌゥイホンポ王国の悲運の王子だと名乗り、王弟の策略により絶望の中絶命してしまったと話す。そして死ぬ前に日本のぬいぐるみ文化を知り、生まれ変わったら自分もぬいぐるみになって愛されたいと願って転生したというのだ。ファーストキス、そしてセカンドキスまでもぬいぐるみ、しかも男に奪われてしまった国丸だが、王子と暮らすうちに少しずつ“ぬい活(=ぬいぐるみ活動)”の魅力にハマっていく。

 ぬい活を楽しむぬいママ、ぬいパパにとって、ぬいぐるみは決してただの“物”ではない。家族であったり友人であったり、ときには恋人のような存在でもある。そのためただ飾っておくのではなく、一緒に写真を撮ったり旅行に出かけたり、中にはこっそり鞄に忍ばせて会社へ連れていくという人もいる。国丸と同じ会社に勤めている別部署の女性・田邉も、会社にぬいぐるみを連れてきている。そして「鞄の中にこの子がいると守ってあげなきゃ この子のために頑張んなきゃって思えるんだよね」と話している。辛いことがあっても、ぬいぐるみの存在がその人の心を癒し強くしてくれるのだ。

 その後も国丸は、王子のために服を作ったり、“正式にお迎え”する儀式としてぬいぐるみのタグを切ったり、洗濯などのケアをしたり……手探りながら王子の世話を楽しんでいく。一方王子は、ほかのぬいぐるみに嫉妬したり国丸に全力で甘えたりと国丸への愛を全身全霊で伝えていく。こんな可愛いぬいぐるみがいたら、もう一生その子といたいと思ってしまいそう…! また、ぬいぐるみを通じて少しずつ“ぬい活仲間”も増え、会社と自宅の往復しかしていなかった国丸の生活も少しずつ変化していく。

 本書に描かれるぬい活の様子は、ぬい活を楽しんでいるぬいママ、ぬいパパはもちろんのこと、推しがいるすべての人が共感できるものではないだろうか。また、ぬい活の楽しみ方が幅広く紹介されているので、これからぬい活を始めたいという人の指南書にもなりそう。筆者も、この『ぬいパパ 成人男子がぬいぐるみのパパになる話』を読んでぬい活を始めてみたくなった。

文=月乃雫