青いアザを持つ女子高生と人の顔がわからない教師の恋の行方は――!? “事情”を抱える者たちの葛藤に目が離せない最新巻!

マンガ

公開日:2021/1/18

青に、ふれる。
『青に、ふれる。』(鈴木望/双葉社)

 人生に味方となってくれる人がいるのは心強い。コンプレックスや抱えている悩みを、自分のことのように親身になって考えてくれたら涙が出るほど嬉しいし、そんな優しい一面を見せられたら、その人のことを好きになってしまうかもしれない。誰かが自分だけに向ける温かなまなざしは、時に、厳しい世の中を生き抜く鎧となり、より強く輝いて生きるための礎にもなるように思うのだ。

 鈴木望さんのマンガ『青に、ふれる。』(双葉社)は、生まれつき右目の周りに「太田母斑(おおたぼはん)」と呼ばれる青いアザを持つ、女子高生の瑠璃子と、「相貌失認(そうぼうしつにん)」という人の顔がわからず、どれも同じに見える症状を抱える新任教師の青春ラブストーリーだ。アザがある瑠璃子は、これまで様々な人間の“悪意のない悪意”に晒され続け、中学時代には不登校にもなる。だが、彼女は傷ついた感情を胸の奥に隠し、周りに気を使わせないよう、いつも笑顔で生きてきた。

 本作は、そんな瑠璃子が、人の顔を判別できない教師・神田に、青いアザを“青色のオーラ”だと勘違いされたことがきっかけとなり、自分とは真逆のコンプレックスを抱えた彼に恋をする過程が、繊細に描かれる。瑠璃子は、神田から自分の本心を周囲に伝える大切さを学ぶ。そのおかげでトラウマのきっかけでもある中学時代のクラスメイト・大橋と再会した際、「傷ついた」と自分の気持ちを伝え、過去に区切りをつけることができた。

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 一方で、教師の神田と瑠璃子の距離はグッと近づいていく。神田は自分の症状を知る瑠璃子のことを、人ごみの中でも見つけられることや、つい目で追ってしまう自分を自覚する。瑠璃子も、学校の文化祭本番で、壮絶な過去の記憶のフラッシュバックに苦しみ、人知れず涙を流す神田を見つけて放っておくことができない。そして、思わず神田を後ろから抱きしめ、「先生を孤独にしたくない…!」と告げるのだ――。

 本作では、美人ゆえに「誰も私の内面を見てくれない」という孤独を抱き続ける副担任の白河の姿も描かれる。彼女は、外見的な“美”ではなく、中身を重視し、誰に対してもストレートな物言いをする神田に好意を持っているのだが、そんな二人の距離が徐々に縮まっていることに、瑠璃子の心は揺れる。また、本当は中学の頃からずっと瑠璃子が好きだったのに、傷つけて不登校にさせてしまったことを心から後悔し、謝罪へ出向き、瑠璃子の気持ちが他に向いていることを知っても、あきらめきれない大橋の恋心も描かれる。誰しも何か事情を抱えており、根っからの悪人は一人も登場しないのに、ちょっとした一言で意図せず相手を傷つけてしまうシーンは、人間関係の難しさを感じた。だが、本作には、人を思いやり、丁寧に向き合うためのヒントもたくさん描かれている。コンプレックスを抱えた人間が、恋をすることで、自分の悩みだけに目を向けるのではなく、相手を支えようと、強く優しく魅力的な人間になっていく様子は、胸がキュンとなった。相手を思うまっすぐで温かな気持ちが胸に染みる、爽やかな恋物語である。ぜひ期待して読んでみてほしい。

文=さゆ

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