今度は“にせパンどろぼう”のアニキに!? リブロ絵本大賞&TSUTAYAえほん大賞W受賞の『パンどろぼう』待望の第2弾

文芸・カルチャー

公開日:2021/2/2

パンどろぼうvsにせパンどろぼう
『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』(柴田ケイコ/KADOKAWA)

 どろぼうなのになぜか憎めない、かわいい登場人物が主人公の絵本『パンどろぼう』(柴田ケイコ/KADOKAWA)が、第11回リブロ絵本大賞と第1回TSUTAYAえほん大賞のW受賞の快挙を遂げ、第13回MOE絵本屋さん大賞2020でも第2位を獲得。その人気を受けて『パンどろぼう』の第2弾が登場しました。

 パンどろぼう、すごい! 自分のことのように嬉しくなるのは、パンどろぼうが、大人も子どもも大好きになってしまう愛すべきキャラクターだからです。

“にせパンどろぼう”の正体は…?

パンどろぼうvsにせパンどろぼう

 シリーズ第2弾として刊行されたのは『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』(柴田ケイコ/KADOKAWA)です。

 そもそもパンどろぼうとは、世界中のおいしいパンを探し求める大どろぼう。パンが好きすぎていつもパンをかぶっています。この姿だけでもかわいいですよね。前回、パン屋のおじさんに諭されてどろぼうから足を洗い、今では大人気のパン屋さんとなりました。

 ある日、店頭に置いていたぶどうパンがなくなってしまいました! 待ち伏せをしていると、ロールパンがぶどうパンを運んでいるではありませんか。ぶどうパンになりすまして相手をおびきよせるパンどろぼう。すると、ロールパンのように見えた“にせパンどろぼう”の正体は、冬に備えて木の実を集めながら、あまりにもおいしそうなぶどうパンを思わず盗んでしまった“ある動物”なのでした。

advertisement

パンどろぼうが“アニキ”になる!

パンどろぼうvsにせパンどろぼう

 自分でつくったおいしいパンにすりすりする姿や、ヨダレを垂らしながらうっとりする様子、もうパンどろぼうではないのにパンをかぶったままのところなど、パンへの愛情があふれる、おとぼけな一面がかわいいパンどろぼう。

 前回はとある衝撃の表情で笑わせてくれましたが、今回も“にせパンどろぼう”と出会ったとき、抜群におもしろい表情を見せてくれています。期待どおり! テンポよく進んでいく物語にも楽しいツッコミどころが満載!

 にせパンどろぼうと対峙する場面では、以前自分がパン屋のおじさんから諭されたときと同じように、今度はパンどろぼうが、にせパンどろぼうにパンづくりのおもしろさを伝えます。コミカルなシーンが続くと思いきや、ここで人情味あふれる場面が登場するギャップもまた、このシリーズのおもしろさです。

 にせパンどろぼうから「アニキ」と呼ばれる、パンどろぼう。意外に人情深い(!?)パンどろぼうにはその呼び名がぴったり。おとぼけの表情とかっこよさのギャップに心をがっつり掴まれます。

笑いいっぱい! 最後はほっこり♪

 最後は、パンどろぼうと“にせパンどろぼう”が力を合わせる姿にほっこり。がんばったらいいことあったね! そんな声を掛けたくなるような心温まるラストです。途中でぶどうパンを作る描写などもあり、「ぶどうパンってこんなふうに作るのか〜」と子どもが興味を持ってくれそう。

 たくさん笑って、最後は心がほくほく。毎日の子育てでクタクタになったときや、なんとなく気分が落ち込むコロナ禍だからこそ、子どもだけでなく大人も元気をもらえるのではないでしょうか。ただし寝る前の読み聞かせでは、あまりのおもしろさにお子さんの目が冴えてしまわないように要注意!?

 作者は、ご自身も子育て中で、イラストレーターとしても動物たちの愛らしい姿などを描いて人気を得ている柴田ケイコさん。子どもたちの笑うツボを押さえたキャラクターの表情や、ママも夢中にさせるオシャレで絶妙な色使いはさすがです。

 理屈ぬきに笑顔になれて、「心を動かすこと」を大事にしているという柴田さんの絵本への想いが伝わるような本作。今後もシリーズが続くことを願って…。絵本好きもトレンド好きも注目の1冊です!

文=麻布たぬ

あわせて読みたい