母・妻・娘以外に、人生に何が残る? 子育て卒業後「何もない私」にならないための30のルール

出産・子育て

更新日:2021/1/26

子育て後に「何もない私」にならない30のルール
『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(ボーク重子/文藝春秋)

 残念ながら今年はコロナで延期・中止が相次いだ成人式だが、新成人にとっては人生の「節目」であり、その親にとっては公的に「子育て」の完了を意味する日といえるだろう。とはいえもし50歳で子育てが終了したとしても、いまや「人生100年時代」。あと30年、40年、50年(!)も人生が続くとしたら、一体どうしたらいいのか。

 ボーク重子さんの新刊『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(文藝春秋)の帯の言葉「母・妻・娘以外に『あなたの人生』には何が残っていますか?」はするどく私たちに問いかける。本書はボークさんの自身の経験とライフコーチとして活躍する中で出会った女性たちの現状から、子育て・仕事・人生・家族・親について「女性が子育て後に後悔することなく、自分自身の人生を生きていくためのルール」をまとめたというものだ。

 ボーク重子さんといえば、ひとり娘が「全米最優秀女子高生」コンクールで優勝し、著書『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)がベストセラーになるなど、いわゆるスーパーマザー。つい「遠い人」と思いがちだが、実はその半生は専業主婦&ワーキングマザー双方のジレンマに陥り、実母からの呪縛に苦しみ、夫に不満を抱えという「女性の悩みあるある」状態だったという。そうした土台が多くの女性と共通するためか、本書が提案する「新しい女性の生き方」は決してハイパーすぎるものではなくきわめて現実的だ。

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「ママ友」は作らないという選択肢もあり

 たとえば子育てでは多くの女性が「ママ友」の存在に悩みがちだが、いくら子どものためと思ってもしんどいものはしんどい。そんなときにはいっそ「ママ友は作らない選択もアリ」だとボークさんはきっぱり。実際、夫しか知らないアメリカですぐに出産したボークさんにはママ友らしいママ友がいなかったため、悩んだときには子どものいない友人に相談してクールダウンしてきたという。むしろ距離のある人(子どもがいない人、子どもの年齢が違う人、親同士の年齢が離れている人など)に相談したほうが「まったく違った視点を与えてくれて、モヤモヤがすっきりすることもある」のだ。

働くママの子はトクをする

 また働くことについても前向きだ。30代の頃こそ「小さい子を保育園に預けて働くなんてかわいそう」と専業主婦をしていたボークさんだが、いまは「働くママの子どもはトクをするというマインドシフトが必要」とワーキングマザーにエールを送る。実はハーバード大学の研究結果によればワーキングマザーの子はジェンダーロールにとらわれず、息子は将来の育児に協力的に、娘は管理職につく割合が高くなるというし、立命館大の調査では「一時保育の利用」だけでも子が精神的に成長し、意欲や積極性が出るなどプラスの効果が明らかになっているという。「子どもに泣かれても、人に何か言われても、預けて働く、預けて時間を作る。だって子どものためになる」とボークさん。経済的に自立すればママの自己肯定感も高まるしメリットは間違いなくあるだろう。

 このほか本書には夫を上手に変えていく方法、親の呪縛から抜け出す方法などボーク流生き方ルールが全部で30。中でも一貫して彼女がメッセージを送るのは「自分のものさしで生きる」ことの大切さだ。あなたは世間や周囲の目を気にして、いつのまにか自分の気持ちを封印してはいないだろうか。だが本当に優先すべきは「自分はどうしたいか」ということ。「子育て中だから」「自分には何もできないから」なんて言い訳せずに、自分の人生に後悔しないためには「自分」をちゃんとみつめて自分のものさしで生きてほしい――そんなボークさんのメッセージには同じ卒母世代として深く共感させられる。そして30代、40代のリアル子育て世代にこそ知っておいてほしいと思うのだ。

文=荒井理恵

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