『生徒会の一存』シリーズの葵せきな原作の同名ラノベを浮遊感増量でコミック化

公開日:2012/7/23

【割引版】マテリアルゴースト (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:星野円原作 価格:216円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「高校生たちが生徒会室でダベるだけ」という斬新な構成で人気を博す『生徒会の一存』シリーズ1作目の出版より、さかのぼること2年前に日の目を見た同名小説(第17回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作)のコミック版。

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主人公・式見蛍(しきみ・けい/高2男子)は、死にたがり。
イジメなどに遭っているわけではなく、特に悲劇に見舞われたわけでもないが、なぜか生きる気力が希薄で、ただ漠然とこの世から消え去りたいという自殺願望だけがあります。かといって、焼身自殺は苦しそうだし、飛び降りは怖そうだし、服薬は本当に楽に死ねるのかどうかが定かでないし、電車飛び込みは怖いし痛いし人に迷惑がかかるし、首吊りは苦しく後が見苦しい…といった具合に、結局いずれの方法にも踏み込めないでいます。口癖は「死にてぇ」。

そんな悶々としたある日、記憶喪失の美少女幽霊・ユウと出会います。ユウは、蛍が幽霊である自分を“視ることができる”ことと、“触れ合えることができる”ことから、すっかり彼を気に入ってしまい、ついて回るようになるのですが…

自殺や記憶喪失がテーマでありながらも全体的にやさしさがあり、ふんわりとしているのは、さすが葵せきな原作というところですが、押さえるべきところはしっかりとシリアスに締めています。温かく、時にひんやりとしたバランスが絶妙な、浮遊感のあるゴーストストーリーです。コミック版の本作では、ふわっとした絵がさらに浮遊感を増量させています。描き手の力量ですね。

『生徒会の一存』シリーズに比べるとノリとテンションこそやや控えめですが、会話術の妙は本作でもいかんなく発揮されています。

じつは、国としては「自殺対策基本法」なるものが2006年6月に成立しています。この中で、自殺予防は社会全体で取り組むべき課題であると高らかに宣言されているのです。さらに文科省は、2009年に「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」の冊子とリーフレットや、「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」などを作成し、各教育委員会や学校に配付しつつ、子どもの自殺予防がテーマの教員研修会も実施されています。また、現在はもっと踏み込み、小中高校の授業に「自殺予防教育」を取り入れるべく、調査と議論が進められているのです。

しかし、文科省が公的文書(『平成22年度 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ』)の「はじめに」で明記しているとおり、「子どもが自殺にまで追いつめられたときに相談する相手というのは、圧倒的に同世代の仲間」です。教員など大人の力だけでは、子どもの完全な自殺予防にはやや心もとない、ということです。

蛍は同世代のユウと出会ったことで、心境にどのような変化があらわれていくのか。1巻では明かされませんが、蛍の“死にたがり”は、じつは意外な思惑が作用していて…


中性的なふんわり主人公。病院で目覚め。自殺願望あり。結局死ねなかったと、ため息をつく

なんとなく、世界がキライ

不思議な幽霊少女・ユウと出会って、日常が変わっていく