現代の女子高生が明治時代にタイムスリップ! 自分とそっくりな少女とその婚約者に出会い…ミステリーとラブを同時に楽しめる『涙雨とセレナーデ』

マンガ

更新日:2021/2/1

涙雨とセレナーデ
『涙雨とセレナーデ』(河内遙/講談社)

 江戸時代が終わり、欧米の文化がなだれ込んできた明治時代の日本。当時の街並みはもちろん、生活様式や教育、男女観など、現代とはさまざまなもの異なる時代ですよね。そんな明治の街に今どきの女子高生がタイムスリップして来たら……。『涙雨とセレナーデ』(河内遙/講談社)は、明治時代にタイムスリップしてしまった現代の女子高生が、運命とせつない恋に翻弄される物語です。

 主人公の片桐陽菜は、剣道部に所属する女子高生。彼女は平凡な毎日を謳歌していましたが、ある日、音楽の授業で明治時代のレコードの曲を耳にした瞬間、意識が遠のき、いつの間にか大きな屋敷の庭に倒れていました。目を覚ました陽菜の前に現れたのは、彼女を「雛子さん」と呼ぶ黒髪の青年・本郷孝章。

 彼は陽菜を雛子と勘違いしたまま、雛子が住む北峯邸に送り届けます。女中に案内された北峯邸の雛子の部屋で、陽菜は自分と瓜二つの少女・雛子に出会います。

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 今、自分が明治40年にいることを知って途方に暮れていた陽菜は、そのまま雛子の部屋に居候することに。元の世界に戻る手段がわからず困っていた矢先、身につけていたはずの大切なネックレスをなくしたことに気がつきます。

 その後物語は、陽菜のネックレスの行方を追いながら、陽菜と雛子、雛子のフィアンセ・本郷孝章、それぞれの想いが交錯するミステリアスなラブストーリーに発展していきます。

 明治のファッションや麗しい明治男子など、見どころ満載の同作ですが、いきなり大昔に飛ばされた陽菜が感じる、大きなジェネレーションギャップも印象的です。陽菜が雛子に成り代わって女学校に潜入した際は、雛子のご学友・絹枝さんにかけられた言葉に、怖い顔で反論してしまいます。

絹枝「本郷家についてはあまり良い噂を聞かないものですから。まあ真実のところはわかりませんけれど、由緒尊い家筋でないご一族が、大きなご商売で成功なさるのに、よからぬ噂はつきものですものね。これはくれぐれも雛子さんのフィアンセを訝しんでいるわけではございませんことよ」

陽菜扮する雛子「はあ? じゃあ何が云いたいワケ? よく知りもしないで漠然と他人の悪口なんか云うもんでないよ」

 現代なら男前な陽菜のセリフにキュンとしますが、お嬢様たちは「私たち…何がいけなかったのかしら」と泣き出してしまいました。明治時代の上流階級の女学生と未来から来た女子高生とでは、相容れない部分がたくさんあるのかもしれません。

 タイムスリップの謎、ボタンの掛け違いで伝わらない恋心、そして、陽菜と孝章をつなぐ幼い日の記憶――。ミステリーとラブが同時に楽しめる『涙雨とセレナーデ』を読んで、時代を超えた恋に想いを馳せてみては。

文=とみたまゆり

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