大河ドラマ『青天を衝け』の予習に! 主人公・渋沢栄一のスゴさがよくわかる入門書

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公開日:2021/2/5

図解 渋沢栄一と「論語と算盤」
『図解 渋沢栄一と「論語と算盤」』(齋藤孝/フォレスト出版)

 2021年、今年の大河ドラマ『青天を衝け』の主人公は渋沢栄一である。

 ……「え? 誰?」と思った人もいるかもしれない。もしくは名前は聞いたことがあるけど、くらいの人が多いのではないだろうか。正直私も、渋沢栄一のことはよく知らず、「大河ドラマの主人公にふさわしいような人物なんだろうか……」と思っていた。

 だが『図解 渋沢栄一と「論語と算盤」』(齋藤孝/フォレスト出版)を読み、俄然、興味が湧いた。渋沢の人生、波乱万丈で面白い。彼は幕末の動乱を駆け抜け、そして生涯に500もの会社設立に関与し、日本資本主義(商工業)の発達に尽力し、日本経済の礎を築き上げた超偉大な人物。またそういった功績だけではなく、現代にも通じる大切な「志(こころざし)」を教えてくれる、そんな存在のように思えた。

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 本書は3つのチャプターに分かれている。チャプター1は渋沢の人生について、2は渋沢が著した『論語と算盤』の教えについて、3は渋沢と関連のあった人物を通し、『論語と算盤』の理解を深められる内容となっている。

 全てのページに図やイラストが入っているため、非常に分かりやすい。

 渋沢についての知識がゼロであった私でも、彼の生き様、功績、考え方、『論語と算盤』の内容が、一読しただけでよく分かった。既に渋沢について専門的な知識がある方にとっては少し物足りないかもしれないが、大河ドラマを観る前の予備知識、第一歩としてなら、充分な内容だと思う。

図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 p.72-73

 また本書では、『論語と算盤』に書かれていることが、現代人にも伝わりやすいように説明されているのもポイント。

「与えられた仕事は全生命をかけてやる」「仁義道徳を見失った会社は成長しない」「仕事を趣味として取り組む」「貧富の格差を是正しなくてはいけない」「人生の運は努力して開拓していくもの」などなど、これらはチャプター2の節ごとのタイトルなのだが、これだけ読んでも、内容が頭にすっと入って来るような感覚になる。

図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 p.112-113

 では、『論語と算盤』の内容を少しだけご紹介しておこう。

 渋沢は『論語』の教えと、「商売で利益を得る」ことが両立できると考えた。『論語』の教えとはつまり、道徳心のことだ。それが渋沢の「道徳経済合一論」という考え方なのだが、元来、論語と商売は相反するものと思われていた。

 それを両立できる(知識を活かせる)と発想し、また実践したところに渋沢のスゴさがある。自己の利益のためではなく社会の豊かさのために一生を費やし、しかも500もの会社を設立に関与して日本の近代化の一翼を担ったのだ。……なぜ今まで渋沢栄一が大河ドラマの主人公にならなかったのか不思議に思えるくらい、志のある、スゴイ人なのである。

 そもそも渋沢栄一が、カッコイイ戦国武将や幕末の維新志士などに比べ、やや「とっつきづらい」印象なのは、渋沢の情報をググると出て来る「日本の資本主義の父」というやや堅い呼ばれ方のせいだろう。お金や経済の話題になると、途端に敬遠してしまう方も多いかと思う。

 しかし、渋沢の目指した経済とは「世の中をよく治めて民衆を苦しみから救う」こと。つまり渋沢は、格差のない社会で人々が豊かに暮らせる時代を作ろうとしたのだ。そう言い換えてみると、戦国武将や維新志士に劣らずカッコよく思えて来ないだろうか?

 今年の大河ドラマも、楽しみだ。

文=雨野裾

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