家族にないがしろにされてきた女子高生が最強カリスマの花嫁に!? 胸キュンが止まらない和風恋愛ファンタジー『鬼の花嫁』

文芸・カルチャー

更新日:2021/2/15

※「ライトに文芸はじめませんか? 2021年 レビューキャンペーン」対象作品

鬼の花嫁~運命の出逢い~
『鬼の花嫁~運命の出逢い~』(クレハ/スターツ出版)

 人間とあやかしが共に生きる世界の日本。家族からないがしろにされ居場所のない女子高生の柚子は、ある日、人間離れした美貌の青年と出会う。それもそのはず、その男・玲夜は、あやかしたちを統べる「鬼」の一族の中でも頂点に立つ若きカリスマだった。玲夜から「俺の花嫁」と求婚され、柚子の運命は大きく動きはじめる――。

 スターツ出版が運営する人気小説投稿サイト『ノベマ!』。数多くの才能を見出し、これぞという投稿作を書籍化してはヒットを連発している。その代表作の1本をご紹介したい。「あやかし×恋愛」をテーマにした第1回キャラクター短編小説コンテストで優秀賞を受賞した『⿁の花嫁』。それを長編へバージョンアップした『鬼の花嫁~運命の出逢い~』(クレハ/スターツ出版)だ。

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 世界中を巻き込む戦争が起きた、その後の日本。人間に代わって社会の中心となっているのは、人間よりもはるかに生きものとして優れている、あやかしたちだった。

 あやかしの男は、時に人間の女性の中から伴侶となる者を選ぶ。誰が、どのようにして選ばれるのかは、当のあやかしにも分からない。自分の意思や好み、理性や社会的常識などを超越して、運命の相手には出逢った瞬間に分かる。

 そしてあやかしの花嫁となった女性は、夫の一族に祝福をもたらす存在として、この上なく愛されるのだった。

 主人公の柚子は、上位に属するあやかしの花嫁に選ばれた妹と、何かと比較されている。両親は妹ばかりに目を向けて、柚子の誕生日も忘れている。自分は誰からも愛されていない。誰にも必要とされていない。

 絶望を胸に家を飛び出した柚子は、玲夜と出逢う。いや、玲夜に見つけられる。唯一無二の花嫁として。

 そこから柚子の人生は転換する。生まれて初めて注がれる〈愛〉に戸惑いながらも、玲夜の真剣さに押されるようにして彼のもとへと身を寄せる。そして少しずつ、自分からも愛することを学んでいく。

 玲夜の仕事を手伝い、共に時間を過ごすことで、次第に彼を知るようになる。やがて気づいたら、いつの間にか彼を愛しはじめている。

 玲夜と共に新しい人生を歩もうとする柚子だが、行く手にはさまざまな困難が立ちふさがる。「鬼の花嫁」に選ばれた柚子を、どこまでも利用しようとする家族。加えて柚子の登場によって玲夜から婚約解消された、彼の元婚約者の鬼の美少女……。

 あるあやかしは玲夜に忠告をする。花嫁の存在は時にあやかしを惑わせる、と。

「妾(わらわ)から見ればまるで花嫁とは呪いのようじゃ」

 強すぎる愛は身を焼き尽くす。ひょっとしたら柚子を愛することは、玲夜に祝福ではなく禍をもたらすかもしれない……と。

 たとえそうであっても、柚子を愛し続けると誓う玲夜。そんな玲夜を信じて、彼の花嫁になる決意を固める柚子。

 鬼の花婿と人間の花嫁は、無事に婚姻の日を迎えることができるのか――。柚子の花嫁修業が本格的にはじまる第2巻も好評の、和風あやかし恋愛ファンタジーだ。

文=皆川ちか

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