エレンに味方するジークの真意は? ベルトルトの記憶を知るアルミンの謎の行動にも注目/アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」第9話

アニメ

公開日:2021/2/14

進撃の巨人
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

「『進撃の巨人』The Final Season」1話から8話まではマーレ側のエルディア人の視点で描かれていた。今週、初めてその視点が、パラディ島側のエルディア人に切り替わる。

 先週、エレンたちの同期で共に巨人と戦い続けたサシャが死んだ。エレンがマーレにあるエルディア人収容区を襲撃したことから、復讐に燃えたマーレの戦士候補生ガビがサシャを撃ったのだ。

 その後、パラディ島に戻ってきたアルミンはある人物に語りかける。
「3年前のあのとき…あのときならまだ、何かを変えられたかもしれない」

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 時代は過去に遡る。ジークと彼の信奉者は、かなり早い段階で味方であるはずのマーレ軍を裏切っていた。だが、ジークの真意はまだわからない。

 ここでジークとエレンの父・グリシャの過去を振り返ってみたい。

 ジークとエレンは異母兄弟なのだ。

 グリシャはマーレのエルディア人収容区で生まれ育ち、差別を受け続けたあげくマーレ人に幼い妹を殺された。父(ジークとエレンの祖父)は家族を守るため、マーレ人に抗議しなかった。大人になった後もそれに不満を持ち続けたグリシャは、マーレと戦おうとするエルディア人復権派に加わり、そこでエルディア帝国の王族の生き残りであり、最初の妻となる、ダイナ・フリッツと知り合う。結婚した二人の間に生まれたのがジークだ。グリシャはジークを「マーレの戦士」にして、エルディア人復権のためのスパイとして育てようとしたが、それはジークに大きな危険を背負わせることを意味していた。

 七つになったジークは、マーレ政府に両親と復権派のことを密告した。罰として復権派は、次々にパラディ島を永遠にさ迷う知性のない人喰い巨人にさせられた。

 他の同志がみな巨人にされ、最後にグリシャが巨人にされそうになったとき、マーレ軍の一人「フクロウ」という人物が進撃の巨人になり、自分の仲間であるはずの軍人たちを全滅させた。「フクロウ」は軍にもぐりこんだエルディア人だったのだ。

 彼から希望を託され、その能力を受け継いだグリシャは、パラディ島の人々が住む壁外を人間の姿でさ迷い、何も知らないパラディ島勢力の調査兵団に助けられる。彼は記憶喪失のふりをして壁内で生活を始め、二番目の妻カルラと結婚、エレンをもうける。

 超大型巨人がパラディ島の壁を破壊したとき、グリシャは壁内にいた「始祖の巨人」の能力を持つ少女フリーダを捕食、「進撃の巨人」と「始祖の巨人」両方の力を手にする。直後に自分を息子エレンに食べさせて死んだ。エレンは知らないうちに、その二つの巨人の能力を継承していたのだ。

 ジークはマーレで「獣の巨人」を受け継ぎ、戦士長になっていた。両親を密告したおかげで祖父母はマーレ政府から手厚い保護を受けている。彼はなぜ祖父母のいるマーレを裏切ってまでエレンの味方になったのか。

 調査兵団の兵長リヴァイも同じ疑問を抱いているようだ。彼は四年前に、当時の団長エルヴィンを含む仲間たちをジークに殺されている。ジークが味方になったと言われても納得できるはずがない。パラディ島の街で彼が獣の巨人になったら大変なことになる。リヴァイは彼を壁外の森へ連れて行く。

 一方、アルミンが序盤で語りかけていた相手は四年前にエレンと戦った後、硬質化し眠りについたアニだった。彼女は「女型の巨人」の能力を持っているマーレの戦士である。アルミンはアニメ3期の後半、アニと同じくマーレの戦士だったベルトルトを捕食し、「超大型巨人」の能力を受け継いでいる。進撃の巨人や超大型巨人など知性を持った巨人は、能力を継ぐと記憶も継承される。ベルトルトは仲間のアニに淡い恋心を抱いていた。アルミンは、ベルトルトの記憶についてエレンに何も言わなかった。だが、なぜアルミンはアニに会いに来ているのか。ベルトルトの記憶が関係しているのではないか。

 数々の疑問を残しながら、第9話は終わる。サシャを殺したガビと、ガビの仲間ファルコはまだ子供だったということもあり、殺されず牢に閉じ込められたままだ。二人がパラディ島でどう動くのかも今後の見どころになるだろう。

文=若林理央