鮎と結婚? バーベル人間になる? 奇想天外な舞城ワールド炸裂の短篇集

小説・エッセイ

公開日:2012/7/29

短篇五芒星

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:舞城王太郎 価格:1,028円

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ご紹介する舞城王太郎さん『短篇五芒星』は、第147回芥川賞の候補作です。恥ずかしながら、舞城さんの作品を読むのは今回が初めてでして、なのにこんな原稿を書いていいのかという葛藤を抱えつつ、話を進めたいと思います。

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タイトルにもあるとおり、本作には短編が5作品収録されています。

「美しい馬の地」
流産に対して、衝動的かつ粘着的な怒りを抱く男が、そのせいで恋人と別れたり、友人を傷つけたりしてしまう話。

「アユの嫁」
鮎と結婚した主人公の姉が、しないはずの妊娠をしてしまってみんな大騒動という話。

「四点リレー怪談」
真っ暗な四角い通路の4つ角に4人を立たせ、順番に次の人にタッチしながら走る「四点リレー」を、殺人事件現場に閉じ込められた人が実験する話。

「バーベル・ザ・バーバリアン」
癌で余命3カ月となった男が持ち上げるバーベルになった主人公が、日本で警察官、海外へ渡り保安官助手をつとめる話。

「あうだうだう」
“あうだうだう”は空っぽの悪い箱で人を襲い、それに食べられた人の人生が厄介なものになってしまう。“あうだうだう”を退治する女の子と、そのクラスメイトの女子の話。

え、なんのこと? 何だか不思議な感じですが…。
どうか、「意味がわからん」と言わないでいただきたい。「意味分かんない」という一言は、相手を下に見て、分からない自分を安全な位置に置くことに他ならないと、誰かが言っていたような気もします。

いや、それは良いとして、スピード感のある展開や、突拍子もない設定、印象的な言葉の選び方、どれをとっても「舞城ワールド」というべきものなのだと思います。僕は、「これってどんな話なんだろう? え、何の話?」と、全体像をつかもうとしながら読んでみましたが、もしかしたら、それも必要ないかもしれません。目の前の文章を追っていくだけで、十分に楽しめる作品たちだと思います。


「美しい馬の地」
流産に怒る主人公に「お前、流産のことについて怒っていることで、なんか倫理的な上位に立ってる気分があるな?」と聞く友人

「アユの嫁」
鮎と結婚した姉が夫のことを、妹に「人の格好してるけど、鮎だよ?魚ってことじゃないけど」と言う

「四点リレー怪談」
四点リレーの怪談のトリックを挿絵とともに解説

「バーベル・ザ・バーバリアン」
鍋うどんこと渡辺は余命3カ月。彼は、バーベル代わりに主人公の征一郎を持ち上げたのだが…

「あうだうだう」
“あうだうだう”に襲われそうになった主人公を中村榛枝が助けるという話