緊張感全く途切れず! 話題の異色作家、鮮烈のデビュー

小説・エッセイ

2012/7/30

盤上の夜

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 東京創元社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:宮内悠介 価格:1,365円

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第1回創元SF短編賞にて山田正紀賞を受賞した上、デビュー作にもかかわらず、第147回直木賞の候補作にもなった話題の作品。作者の宮内悠介氏は、早稲田大学第1文学部を卒業後に海外放浪、帰国後は麻雀のプロ試験を受けて補欠合格。しかし、繰り上がりの知らせが無かったため、文学部卒なのに何故かプログラマーになった、というかなり変わった経歴の持ち主。これだけで既に興味深い。

この『盤上の夜』は、ボードゲーム、つまり「盤」を使用する遊戯5種を題材とした6話からなる連作短篇集。ここで展開されるゲームは、囲碁・将棋・麻雀・チェッカー、そしてチェスや将棋のルーツとされるチャトランガ。チェッカーとチャトランガに関しては失礼ながら全く知らないゲームであったことが若干悔やしい。

とにかく文章全体が醸し出す緊張感が半端でない。この作品の流儀に則って麻雀風に解説すると、「あと1枚で役満」的な高揚する類の緊張感ではなく、無理矢理参加させられた高額レートの卓で「振り込んだら一家離散」というところに危険牌を掴んでしまった、という種類のモノ。読んでいるだけで胃がキリキリ痛む、あまりに刹那的な内容に終始する。読了後、しばらく呆けてしまうくらい、強烈な作品。

表題作に登場する「四肢を失った女流棋士」など、素材に若干グロテスクな部分も。ただ、それはあくまで素材であり掴みに過ぎない、ということは、読み進めて行けばすぐに理解出来る。各ボードゲームに対するディテールも異様に細かく、ゲーム経験者・非経験者を問わず、ギリギリで何故か切ない「勝負」の世界へ引き込む。この臨場感、ちょっと尋常で無い。

ジャンルはSFで全く問題無いのだが、サスペンスやミステリーの要素も多々。デビュー作でここまで独自の世界を創造してしまうのだから、この作家の将来は末恐ろしい。体調を充分整えた上、心して読むべし!


単行本と同様の表紙付き、これがあるとかなり雰囲気が良くなる

アップデートで更に進化したkinoppy、相変わらず解りやすいインターフェース

全6篇、全てボードゲームをモチーフにした短編

各章の始まりには必ずゲームの解説あり、非経験者でも入り込みやすい構成

電子書籍リーダーではおそらく最強のしおり機能、アニメーション+サムネイル表示