どんどん捨てられる5つの質問!――服の山に隠れていたのは「思い出」という“ガラクタ”《新感覚の片付け本》

暮らし

更新日:2021/2/26

心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ
『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』(ブルックス・パーマー:著、弓場隆:訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「日々の忙しさや生活に追われ、気がつけば自分の部屋が荒れ地になっていた」

 大なり小なり、多くの人が自分の部屋の乱れに悩んだ経験があるのではないでしょうか。

“部屋は心の写し鏡”なんて言いますが、部屋が汚いから心の中が荒むのか、心の中が乱れているから部屋に不要なものが増えていくのか。どちらが先かわからないけれど、部屋と心は共鳴している……そんな気はしますよね。

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『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』(ブルックス・パーマー:著、弓場隆:訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、アメリカで片付けコンサルタントとして活躍している著者によるお片付けエッセイ。

 著者・ブルックス氏が依頼人の部屋をただ片付けていくだけでなく、彼らの内面にある捨てられない“ガラクタ”をひもといていく様子も描かれています。ブルックス氏によると、ガラクタはただの不用品ではないそう。

「ガラクタとは、何の役にも立たないのに、あなたがしがみついているモノのことです。(中略)持っていても生活の質は向上しません。むしろ、必要な変化を起こすうえで障害になります」

 具体的には「着なくなった服」や「聴かなくなったCD」など、値段にかかわらず“自分にとっての価値を失ったモノ”こそがガラクタなのです。これだけでも、心当たりがある人は多いはず。筆者の部屋にも、思い当たるガラクタがたくさんあります……。

 同書のテーマは、人々の成長や変化を阻害するガラクタを捨てること。実践すれば部屋と心がスッキリする一石二鳥なテクニックが、実例を交えて多数紹介されています。

過去と服に埋もれていた人

 ブルックス氏のもとに舞い込んできたのは「服がいっぱい溜まって困っているので助けてほしい」という依頼。彼女の言うとおり、部屋の中はあたり一面服だらけでクロゼットの前も中も服の山、本棚にも服が載っかっている状況だったとか。ベッドの上にも服が覆いかぶさっており、彼女はいつもベッドの隅に服を移動して体をひねって寝ていたそうです。

 ブルックス氏は、彼女の部屋を見て「これはなんらかの気持ちを覆い隠すときによく見られる現象」と分析します。いらない服を捨てるように提案すると「服を整理整頓しさえすればいい」と反論する依頼人。そこでブルックス氏は、彼女をこう説得しました。

「ガラクタが溜まって生活に支障をきたしていますよ」
「待てば待つほどガラクタが溜まって、部屋の中がますます歩きづらくなります。快適な生活を実現するのをお手伝いしましょう」

 それを聞いた彼女は、ようやく服の処分を承諾しました。冷静な第三者から“生活に支障をきたしている”と言われ、目が覚めたのかもしれません。

 以下が、服を選別する際にブルックス氏が依頼人に投げかけた質問の一部です。

①この服を最後に着たのはいつですか?
②まだこの服が好きですか?
③今日、買い物に出かけたら、この服を買いますか?
④サイズはまだぴったり合っていますか?
⑤着ないのなら捨てましょうか?

 これらの質問を受けて思い浮かんだ服があれば、それは捨てるべきガラクタの可能性があります。

 服がどんどん捨てられていき、ついにふたりは「衣類の墓場」と化していたクロゼットにたどり着きました。すっかりブルックス氏に心を開いた依頼人は、クロゼットの中には「五年間付き合った恋人との思い出が詰まっている」とブルックス氏に告白します。

「不幸な結末を迎えたらしく、恋人との別れを打ち明ける様子には、彼女の心の奥底にある傷を感じました。しかし、彼女はまだその思い出を大切にしている様子で、当時を懐かしんでいました。つまり、その部屋は、破綻した二人の関係が埋葬された墓場だったのです」

 ブルックス氏は「過去を思い出せるモノを捨てることができるのは、あなただけ」と伝え、彼女の決断をサポート。彼女は涙を流しつつ服を選別し、いらない服を慈善団体に寄付して着ている服はハンガーに掛けてクロゼットにしまうことができました。

 本書に登場するのは、小さな心の乱れが増幅して部屋が荒れていった人々ばかり。ブルックス氏のやさしくも厳しい言葉で部屋がキレイになっていく様子は、とてもドラマチックです。

 部屋がなぜグチャグチャになってしまうのか、その理由を知りたい人に読んでほしい一冊。

文=とみたまゆり