男性はなぜ恋人よりも男友達を優先しがち? 恋バナ収集ユニット桃山商事による「NEO恋バナ」

恋愛・結婚

公開日:2021/2/26

どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか
『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(桃山商事/イースト・プレス)

 清田隆之さん、森田雄飛さん、ワッコさんの3人を中心とした恋バナ収集ユニット、桃山商事。メンバーは、2001年の結成以来、人々の恋愛相談に耳をかたむける「失恋ホスト」の活動を続けてきた。その活動は、相談者の恋愛に潜むモヤモヤを、みずからのイタい失敗や下ネタを晒してぶった切り、できたピースをメンバーで語り合いながら再構築し、人間のコアにあるものや、ジェンダーの問題を浮き彫りにすることでもおなじみだ。

 そして、メンバーが「NEO恋バナ」と呼ぶこの一連のやりとりをまとめた最新刊が、『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(桃山商事/イースト・プレス)として刊行された。1200人以上もの恋バナを聞き続けて20年、時代が令和へと移り変わる中で、メンバーは今、なにを感じているのだろう? そのヒントとなりそうなのが、本書のタイトルに含まれる「男友達」という言葉だ。実はこのタイトルには、『どうして男(あいつら)は恋人より男友達(ホモソーシャル)を優先しがちなのか』というふりがながついている。

 桃山商事が前作『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』を出版したのは、2019年のことだった。ちょうど「#MeToo」ムーブメントなどがおこり、女性たちが感じてきた理不尽が注目されはじめた時期だ。メンバーいわく、その中のひとつには、これまでよきものとして語られてきた、男同士の絆や連帯を意味する「ホモソーシャル」への疑問があるという。恋愛においても、そんな理不尽に首をかしげはじめた相談者がいる一方で、ここ数年、マッチングアプリも爆発的に普及。恋愛の進め方も、どんどん進化(?)しているようだ。

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 そんな世相を表すように、今回、桃山商事が選んだテーマは、ホモソ問題をはじめ、終電1時間前に「今からって時間ないよね?笑」と送られてくるクソLINEについて、恋人の裏アカ発見とその顛末、生理にまつわる話やステイホーム下での恋愛事情など、これまで語られてこなかった、時事ネタで終われない、恋愛の“今”を映し出すものばかり。さらには社会学者の富永京子さんと語り合う「恋愛とわがまま」の話題からは、現代社会の複雑さと、その中で信頼関係を築くための方法が見えてくるし、臨床心理学者の東畑開人さんと「恋愛とコスパ」について話せば、効率や成長に囚われがちな現代における、恋愛の強みが浮かび上がってくる。

 恋愛の相手は、多くの場合、赤の他人だ。恋の悩みの検討は、会社で、学校で、趣味の仲間うちで、他人とうまくやっていく方法を検討することにほかならない。そう考えると、恋愛の悩みを抱えているという人はもちろん、上司や部下とどうも話がすれ違う、ママ友との関係で困っているという人たちも、「こういうことあるある、こんな人いるいる」と笑いながら本書を読むうちに、なんらかのヒントを得られそうだ。

 男も女も、恋愛中の人もそうでない人も、“今”をともに生きる“他人”との関係に思いを馳せることができる本書。人と生身で接触しにくいときだからこそ、手に取ってみてはいかがだろうか。

文=三田ゆき

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