「ずるい」考え方は間違っていない! ラテラルシンキングを活用して、常識に囚われない考え方を身につけよう

マンガ

公開日:2021/3/2

まんがで身につく ずるい考え方
『まんがで身につく ずるい考え方』(木村尚義:著、たかうま創:イラスト/あさ出版)

 一般的に「ずるい」といわれていい気分になる人は少ないだろう。それは言葉の意味に「要領よく自分の利益を追求する」という、要は「楽をしている」みたいなイメージがあるためだと思われる。確かに、それが何らかのルールに抵触するかもしれない行為であるなら問題はある。しかし、ルールに則った上で楽をして利益を得られるなら、その「ずるい」は非難されるべきなのか──? 『まんがで身につく ずるい考え方』(木村尚義:著、たかうま創:イラスト/あさ出版)は、この「ずるい」考え方をいかに実生活で活用するかを漫画で分かりやすく教えてくれる。

 さて、ひとことに「ずるい考え方」といっても、ちょっと想像しづらいかもしれない。本書では例として「十二支」の話を提示する。簡単に述べると、釈迦が先着順で山頂にたどり着いた動物を干支に定めると告知。牛が一番と思いきや、その背中に乗っていたネズミが結果的に一番をゲットしている。干支のレースでは順番は問うているが方法は問われていなかった。だからネズミは一番先に到着しそうな牛の背中に乗り、「楽な」方法で先頭ゴールを果たしたのだ。これこそが「ずるい考え方」であり、ラテラルシンキングとも呼ばれる。人によっては「ずるい」と感じられるネズミの行為も、見方を変えれば非力なネズミが他の動物を逆転するというサクセスストーリーにもなるのだ。

 では、実際に現実ではどのような考え方がラテラルシンキングになるのか。本書では主人公・品田杏奈の周りで起こるさまざまな難問を、ラテラルシンキングで解決していくという形式で紹介している。

advertisement

 杏奈は百貨店の企画部に在籍しているが、最近の百貨店は売り上げが低迷。売り上げが伸ばせるような企画の提案を上司から迫られる。悩む杏奈が実家の神社を清掃していると、そこにキツネのオバケが現れて、杏奈に「発想の転換でもっとラクにゴールできるようにする」ことを勧める。「ずるい」考え方に抵抗のある杏奈は「ロジカルシンキング」で現状を打破しようとするが、次第に行き詰まっていく。そんな彼女にキツネはラテラルシンキングの例をアドバイス。例えば「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が販売促進のために用いた「ドーナツ12個入りの箱を配る」という手法は型破りだが、結果として口コミが口コミを呼び大盛況となった。そういう常識に囚われない、自由な発想を杏奈に求めたのである。

 キツネのアドバイスをもとに、杏奈はこれまでの企画を大胆に見直してみる。「靴のフェア」であっても靴を売る必要があるのかなど、徹底的に考え方を転換していったのだ。結果、彼女の企画は採用され、イベントは大盛況となった。それは靴のイベントにおいて、催場にはサンプルしか置かず、決済はすべてQRコードで行ない、商品は倉庫から直送する仕組みに。これで客が商品を持ち運ぶ手間や、在庫の場所をなくすことが可能となり、よりサンプルの展示に力を入れることができたのだ。

 本書ではこのほかにもさまざまな「ずるい考え方」のエピソードが語られる。しかし一方で「自分で考えなければラテラルシンキングの力は伸びない」という。知っていても、使わなければその力は伸びない。自由な発想をしている人は、普段からそういう考え方をしている人なのである。コロナ禍でこれまでの方法論が通じなくなっている今、ラテラルシンキングを試してみるよい機会かもしれない。「ずるい考え方」こそが、今の苦境をチャンスに変えてくれるかもしれないのだから。

文=木谷誠