図書館に軍隊?! 本と王子様を愛する熱血乙女が暴走爆走そして戦闘!

小説・エッセイ

2012/8/1

図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:有川浩 価格:693円

※最新の価格はストアでご確認ください。

公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」が施行された世界が舞台のSF。さまざまな書籍が検閲され、世の中から読みたい本がどんどん消えていく中、自由に本が読めるのは図書館だけになった。メディア良化委員会は図書館の蔵書すらも駆逐しようと攻撃をしかけ、図書館側も専守防衛とは言え「図書隊」を組織して武力で対抗。本書は、志願して図書隊に入隊した女性新人、笠原郁の物語である。

──とまあ、堅苦しくも真面目な内容紹介を書いたものの、いやもうこれが笑えて泣けて刺さって癒されて甘くて苦くて、つまるところべらぼうにおもしろい!

ヒロインの笠原郁は身長170センチで運動神経抜群、アタマの方は単純明快の直情型。数年前に図書隊の隊員に窮地から救い出された体験が忘れがたく、顔も覚えていないその隊員を「王子様」とあがめ「自分も図書隊員になる!」と決意した乙女でもある。この暴走型筋肉系単純乙女が、同じ班の上司や同僚、寮で同室の親友らと「本を守るため」戦う中で成長していくという成長小説であり、検閲とは何か表現の自由とは何かを追求する社会派小説であり、そして郁と「王子様」の典型的ベタ甘恋愛小説なのだ。

この設定は諸刃の剣で、明るく元気なだけで仕事のできないヒロインというのは度が過ぎると腹立たしいし、社会的なテーマは1歩間違うと説教臭くなるし、恋愛要素も描き方次第では公私混同キャラに映りかねない。ところが本書は、あるひとつの設定を加えることで、それらのリスクを突破している。その設定とは──ヒロインの郁が自分の未熟さと真正面から向き合う、ということ。

自分とは違う考えを否定し、できないことは自分に言い訳をし、深く考えることをしなかった郁。しかし根拠のない思い上がりや勘違いは確実に、折られる。同僚に比べいろんな面で劣っている、上司に心配と迷惑をかけている──そういう事実を郁は次々と否応なく自覚させられる。反論の余地がないことを骨身に沁みるほど思い知らされる。しかも彼女の失敗は誰しも身に覚えがあるようなものばかりなので、読者は彼女に(あるいは他の人物に)問答無用で感情移入させられる。

ただ、郁は決してバカではない、というのがポイント。いや、バカではあるが、心根が上等なのだ。自分が間違っていたという事実を即座に素直に受け入れ(これはかなり難しいことだ)、その上で挽回を誓う。だから気持ちいい。そういった「個」の問題が検閲や差別といった「公」の事件と絡めて語られるため、社会派なテーマがごく身近な問題として読者に届く。それらがすべて、まるで掛け合い漫才のようなコミカルでテンポのいい会話と文体でドタバタとエキサイティングに進むのだ。おもしろくないわけがない。

読者は郁の中に、あるいは彼女を取り巻く人物たちの中に、自分を見るだろう。それは思い出すと恥ずかしいかつての自分かもしれないし、こうなりたいと夢見る未来の自分かもしれない。読者が登場人物と一緒に笑ったり泣いたり怒ったり喜んだりできる。これはそんなシリーズだ。


登場人物一覧はカラーイラストで!

図書隊の組織説明や見取り図なども

DVDーBOX初回限定版についていた短編も巻末に特別収録。本書に収録されているのは『ジュエル・ボックス』