『きかんしゃトーマス』には子どもの思いやりやコミュニケーション能力のヒントがいっぱい! トーマスで育てる「非認知能力」

出産・子育て

公開日:2021/3/10

きかんしゃトーマスでつなげる 非認知能力子育てブック
『きかんしゃトーマスでつなげる 非認知能力子育てブック』(東京学芸大こども未来研究所/東京書籍)

 「友だちにできることが自分にはできない」
 「ケンカした友だちと仲直りする方法がわからない」

 子どもがそんな壁にぶつかったら、親はどのようにサポートすればいいのでしょうか。そのままでは自信を失ったり、友だちとの良好な関係が作れなくなったりするのではないかと心配です…。

 そこで活用したいのが、『きかんしゃトーマス』を通して子どもに非認知能力につながる気づきを与えてくれる1冊『きかんしゃトーマスでつなげる 非認知能力子育てブック』(東京学芸大こども未来研究所/東京書籍)です。

 非認知能力とは、自分を好きになって勉強などに積極的に取り組むことができる自己肯定感や、自分以外の誰かと協調的に関わる主体性などをさす能力のこと。幼い時に身につけるほど、学びに向かう力や人間性が育つと言われています。

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キャラクターに自分の気持ちを重ねて学ぶ

 ソドー島でそれぞれの役割を果たしながら元気にはたらく『きかんしゃトーマス』の機関車たち。さて、彼らは子どもに何を教えてくれるのでしょうか。

 本書では、キャラクターの心がどう動き、相手とのやりとりでどのように非認知能力につながる気づきを得るのか、エピソードとあわせて紹介されています。それによって子どもたちはキャラクターに自分を投影し、自分らしさの見つけ方や相手との良好な関係の結び方を学ぶことができます。

 たとえば、本書では“自分の良さに気づくこと”を学べるお話として、「ケビンのじまんのフック」というエピソードが紹介されていました。

 ケビンは整備工場ではたらく、小型のフックがついたクレーン車です。ある時、トーマスやパーシーが貨車をガシャンと押して遊んでいるのを見て、自分もうまく貨車を押してみたいと練習することにしました。ところが、トーマスたちのようにバッファー(緩衝器)がついていないケビンには、うまく遊ぶことができません。そればかりか、積まれていたドラム缶をまき散らして、機関車たちを整備する仕事もできず、いろんな機関車に迷惑をかけてしまいます。

 みんなを困らせた上に役に立つ仕事もできず、落ち込むケビン。遊ぶのをやめ、責任をもって仕事をすることにしました。すると、はたらくケビンを見たトーマスとパーシーが、ケビンのフックを使えば、物をかくす“たからものさがし”の遊びができることを発見します。仕事を終えて、トーマスたちと遊ぶケビンはとてもうれしそう。ケビンは自分にしかないものを見つけることもできました。

わが子が自然と自分の話をしてくれた

 このエピソードでは、「まったく同じじゃなくても、自分の良さを生かして遊べてうれしかった」というケビンの言葉や、「誰にでもいいところがあって、周りの人たちのおかげで気づくこともある。きみも自分らしさをさがしてみては?」というトップハム・ハット卿(トーマスたち機関車を支えるソドー鉄道の局長)の言葉があわせて紹介されていました。

 親はこの部分をそのまま読んでも、自分の言葉で伝えてもいいと思います。筆者も4歳の息子に「自分らしさはどんなところ?」と聞いてみると、「もちろん僕にもいいところあるよ」と自分や友だちの関係などを教えてくれました。いつもは保育園のことを聞いてもあいまいな話が多いので、具体的な返事が即座に戻ってきてびっくり。リアルな声を聞けてとてもうれしく感じました。

 他にも本書には、わかった気にならずに教えてもらうことや、相手の話も最後まで聞くこと、偏見を持たないことの大切さなど、自分の立場を理解しながら周りの人たちとうまくやっていくために役立つエピソードがいっぱい紹介されています。

 あまり自分のことを話さない子や、友だちとの関係で悩んでいる子も、お話の流れで自然と親子の会話が生まれ、悩みを解決するきっかけが掴めるかもしれません。

おうち時間でも自己肯定感を高めたい

 さまざまな機関車たちがはたらくソドー島は保育園や幼稚園、学校そのもの。鉄道好きだけではなく、すべての子どもたちが親しみを感じられる物語だと思います。TVアニメも放送されていますが、本書だけでもトーマスたちの世界観を楽しめる物語がたくさん。なぜトーマスで非認知能力が上がるのか、親が読んで気軽に学べるコラムも充実しています。

 キャラクター別にまとめられたエピソードもおすすめ。本作に登場するキャラクターは子どもの友だちのような存在になりやすく、自閉症の子どもたちの社会的スキルや情緒面の成長を促すという効果も報告されているそうです。74種類ものキャラクターの中からお気に入りを見つければ、物語の世界観に入りやすそうですね。

 トーマスたちが教えてくれることはとてもシンプルで、生きていく上で大切なことだけど、忘れてしまいやすいことばかり。子どもだけでなく、大人の心にもグッと響きます。最近は勉強で育つ認知能力よりも大事だと言われる自己肯定感や非認知能力ですが、周りの人たちとのふれあいが少なくなっているコロナ禍で育ちにくくなっている側面もあるはず。おうち時間で本書を読み、親子で気づきを得て、アフターコロナに備えて周りとうまくやっていく術を身につけておけるといいですね。

文=麻布たぬ

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