足立区がも~~っと好きになる!? 『出没!アダチック天国 極』は足立愛にあふれる編集者と共に巡るエッセイコミック

マンガ

公開日:2021/3/12

出没! アダチック天国 極
『出没! アダチック天国 極』(吉沢緑時/竹書房)

「足立区のリトルマニラ? 竹ノ塚に潜入」「いま昭和何年? 一杯80円の激安ラーメンの味は……」など、思わずページを繰ってしまう見どころ満載のルポ・コミック、それが『出没! アダチック天国 極』(吉沢緑時/竹書房)である。

 生粋の“足立女”編集者・I島さんが企画した本作は「足立区のイメージUP漫画」として描かれ、2018年に単行本化。このたび2巻目となる『極』がめでたく発売された。

 足立区で育ち、今も住み続けているI島さん。彼女に連れまわされて漫画を描くのがノット足立区民の吉沢緑時氏。二人は、東京23区で異彩を放つこの区の印象を変えられるのか……?

出没! アダチック天国 極

advertisement

足立区の知られざる(?)魅力を知れるルポ漫画

 TVや雑誌などのメディアで、足立区の竹ノ塚はよく“変わった場所”として取り上げられている。またネット上でも足立区はネタとして引き合いに出されているのを見かけることがある。

 この本は、足立区のいろんなスポットを体験・紹介し、知られざる(?)足立区のさまざまな表情を見せてくれる。目次から一部抜粋して主な内容を紹介していこう。

・「酉の市」の発祥は足立区だった!?
全国で催される酉の市の発祥とされる大鷲神社を取材。チチクリあうカップルを探しに神社の裏手へ率先して向かうI島さんは、おみくじを引くがいかに…。

・この給食がすごい! 足立区給食革命!
今回は“足立区ディスり”無し? 区役所内のレストランでは日本一と言われる給食が食べられる。吉沢氏も舌鼓をうった美味しさの理由とは?

・毎日でも通いたい! 味のある喫茶店!
I島さんによれば、実は足立区は都内4大喫茶聖地のひとつなのだとか……!? 市場喫茶、蔵リノベ喫茶、ロケ地御用達喫茶などバラエティ豊かな喫茶店を巡る。

・あだち酒まつりで足立区に酔いしれる!
「足立区は毎日酒祭りでは?」失礼なことを言いつつ、酒まつりへ参加(二人は下戸である)。ここでは“そんなに”飲めないと言っていたI島さんが、足立女の心意気をみせる!

・昭和にタイムスリップ! 一杯80円の激安ラーメンを食らう!
いつ開店しているか分からない駄菓子屋へ。中は昭和以前にタイムスリップしたかのような異空間。そこには童心を呼び起こす、出汁香る驚きのウマさが待っていた!

出没! アダチック天国 極

出没! アダチック天国 極

出没! アダチック天国 極

・アクリル全開!足立区のプロフェッショナル!
モノ作り、町工場のメッカのひとつである足立区。コロナ禍で全国から発注が絶え間ない、アクリル企業へ潜入する二人が見たものとは?

 読んでみると意外に(?)真面目な取材先が多いと感じた。要所ではやはり笑えるのだが、「へぇ~」感のある文化的・歴史的な情報に好奇心が刺激される。

伝われ! この足立区愛!!!!(主に編集者I島さんの)

 本作を読んで感じたのは、足立区の知られざる魅力と、吉沢氏&I島さんコンビのやりとりが楽しくほほえましいことだ。

 エッセイコミックで意外とあるのが、漫画家と編集のギスギスした関係の笑いだが、本作はとにかくほのぼのとした雰囲気で気持ちよく読める(絵柄のかわいさも、もちろんあるが)。個人的に足立区で楽しそうに生きるI島さんのファンになってしまった。

出没! アダチック天国 極

 足立区民以外の都民も、地方民さえ笑えて、行ってみたく(住んでみたく)なるかもしれない本作。最後に書いておきたいのが、前巻『出没! アダチック天国』で描かれていた“目的”のひとつ、I島さんの本音だ。

ここ数年
足立区・婚活で検索するたびに…
足立区の女はヤバそうとか出ちゃって…
このままじゃ婚期逃す…

「足立区のイメージを上げる」。正直、個人的にこの話は逆効果では……と思ったところもあったが、ファンとしては彼女が幸せになることを願ってやまない……(涙をぬぐいながら)。

 いろいろな意味で体を張った漫画家&編集者コンビのルポ・コミック。ぜひ読んでみてほしい。

文=古林恭