スペイン、バリ島、アメリカ…世界各地ハプニングづくし! さくらももこさんの爆笑必至の旅行エッセイ

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/20

ももこの世界あっちこっちめぐり
『ももこの世界あっちこっちめぐり』(集英社文庫)

 旅に出かけたい気持ちが日に日に募っている。憎き新型コロナウイルスのせいでそんな欲求は満たされないまま。はやく安心して旅行に、それも海外旅行に出かけたいものだ。

 旅行に行きたくてウズウズしているという人は、今は本の中で旅行を楽しんでみてはいかがだろうか。『ももこの世界あっちこっちめぐり』(集英社文庫)は、さくらももこさんによる笑いと感動の旅行エッセイ。1996年、当時31歳だったももこさんが訪れたのは、スペイン、バリ島、アメリカ西海岸、ラスベガス、ベネチア、パリなど6カ国17カ所。ももこさんの痛快な語り口調を味わっているうちに、なんだか自分もももこさんと一緒に旅行に出かけたようなワクワクした気分になってくる。

 ももこさんが描く海外の景色はどうしてこうも魅力的なのだろう。だが、この本は、それだけではない。ももこさんの旅先でのトラブルにクスッと笑わされてしまうのだ。たとえば、スペイン旅行では、旅行期間中、ももこさんの夫が、ずっと腹痛に悩まされていた。毎朝「今日は絶食する…」と言いながらも、旅先の美味しそうなものを見ると、「なんだかお腹の調子がいいみたい」と言い出し、毎回食べすぎてしまう。そして、夜中には再びひどい腹痛に苛まれ、翌朝はまた「今日こそ絶食する…」とあてにならない宣言をする…。旅先で美味しいものを見かけたら、きっと我慢する方が難しい。夫の災難に同情と共感の念を覚えつつ、不謹慎ながらも、笑わされてしまったのはきっと私だけではないはずだ。

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 父・ヒロシさんとアメリカ・グランドキャニオンを訪れた話は、まるで『ちびまる子ちゃん』の漫画のような旅行記だ。グランドキャニオンは、ヒロシさんが「世界で一番行ってみたい」と言っていた場所。はじめての親孝行にももこさんはだんだん不安になってきたという。グランドキャニオンへと向かうセスナでも落ちて「まる子、親孝行がアダに!」「まる子、父ヒロシと夫と共にグランドキャニオンに死す」というような新聞の見出しを書かれてしまうのではないか、なんて心配までする精神状態。だが、実際に行ってみると、そんな不安は杞憂だった。

 グランドキャニオンのうねるような地層の断崖、力強い地層の谷間からは、ものすごく静かで大きなエネルギーの流れが感じられたという。「まさか一緒に見れる日が来るなんて、思ってなかったよね、お父さん」と、ももこさんは心の中で思った。ももこさんと同様、ヒロシさんも壮大な景色に感動していたようだ。「キャニオンはでけぇなァ」と勝手に略して言っていたというのも、日本に帰ってももこさんの母に必死に土産話をするも上手く伝わらず「わかんないね」と言われてしまったというのも、なんだか微笑ましい。

 ももこさんはとっても素敵な女性だ。当時のももこさんは今の私と同い年だが、ももこさんの姿が本当にまぶしく目にうつった。ベネチアではベネチアングラスでできたシャンデリア、バリ島では絵画、パリではピエール・ラニエの限定モノの時計…。好きなものを全力で追いかけ、好きなもののためなら金に糸目をつけない。いつもお気楽なのかと思えば、「核実験をしたフランスには行きたくない」と思い悩んだり、「安楽死が認められていることをオランダの人はどう思っているのだろう」と疑問に思ったりするなど、しっかり自分なりの視点で真摯に世界を見つめている。そんな姿が印象的で、この本を読んでますます、ももこさんのファンになってしまった。

 コロナが終息したら、この本で紹介された場所をめぐってみたい。思う存分、世界をあっちこっちめぐりたい。本の中で旅行気分を味わっているうちに、気づけば、コロナが終息した後の楽しみができてしまう1冊。

文=アサトーミナミ