夢がかなって海賊デビュー! 『もいもい』作者が描く、ひとつずつ願いを叶えるタコせんちょうの物語

文芸・カルチャー

更新日:2021/3/30

かいぞく タコせんちょう
『かいぞく タコせんちょう』(二宮由紀子:文、市原淳:絵/KADOKAWA)

 入園や入学の季節。新しい環境に入っていくことに、楽しみと緊張が入り混じるお子さんは少なくないのではないでしょうか。『かいぞく タコせんちょう』(二宮由紀子:文、市原淳:絵/KADOKAWA)は、そんなお子さんにおすすめしたい絵本です。

 主人公は、その名も「タコせんちょう」。かわいいタコのキャラクターが海賊となって、冒険へと飛び出します。

かいぞく タコせんちょう

 小さな頃から、海賊になるのが夢だったタコせんちょう。大きくなったので、自分でスミをふいて帽子や眼帯を作り、海賊デビューすることに。まずは「手下」を探しに出かけます。しかし、手下はなかなか見つかりません。そこでタコせんちょうが手下にしたのは…「8本の足」でした!

かいぞく タコせんちょう

 海賊船を探していると、いきなり目の前が真っ暗に。山賊のイカ軍団に襲われたのです! しかし「おいおい、山賊は山にいるものだ」と教えてあげると、イカ軍団は「ありがとう」と言って山へ向かいました。

 ところが、ほっとしたのも束の間。海賊船を探して海面に出た瞬間、砲弾と矢が襲いかかってきたのです!

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新しい世界にドキドキ。不安にも寄り添ってくれる

 タコせんちょうの大冒険。それは、子どもがこれから入っていく新しい世界とよく似ています。イソギンチャクやヒトデといった仲間たち、そしてイカ軍団というライバルのような存在。その先には思いがけない出会いも。新しい世界はとても楽しそうです。

 勇気があり、眼帯で前が見えなくなったり、仲間から手下になるのを断られたりと、親しみやすいタコせんちょう。新しい環境に不安を抱えるお子さんにとっては、友だちのような心強い存在になってくれるかもしれません。

 タコせんちょうが出会うイカ軍団たちにも注目です。最初は敵のように思えても、わかりあえれば仲良くなれるのです。「最初は気に入らなかったけど、話してみたらいい人だった」みたいなこと、大人でも経験ありませんか? 「新しく出会う友だちだって悪くないかも」という感覚を受け止めてくれたら、お子さんの安心感につながるのではないでしょうか。

一歩ずつ夢に近づいて「成功体験」も!

 タコせんちょうは、どうしたら夢に近づけるのか、自分の力で考えてチャレンジを重ねていきます。たとえトラブルに巻き込まれても果敢に立ち向かい、「夢を叶える」という成功体験を得ていくのです。

 とはいえ、いきなり高みを目指すことはしません。身近なところから始めて、ひとつずつ着実に目的を果たしていきます。最後には思いがけぬ展開が待ち受けていますが、それも楽しんでしまう柔軟さも、タコせんちょうのすごいところ。

「自分で考える力」や「柔軟さ」があれば、大人になってからも力強く生き延びていけるのではないでしょうか。

 ひとつずつ着実に願いを叶えていくタコせんちょうの姿に、わが子が自分を重ね、さまざまな学びを得てくれたら…と願わずにはいられません。

 タコせんちょうの活躍を見ながら、「将来は何になりたい?」とお話してみるのもいいですね!

気になる展開とかわいい絵で子どもが夢中に

 赤ちゃん学を取り入れた人気絵本『もいもい』の著者・市原淳さんと、赤い鳥文学賞や日本絵本賞翻訳絵本賞を受賞している二宮由紀子さんがタッグを組んで完成した本作。ワクワクするストーリーと、カラフルで楽しさいっぱいのイラストが魅力です。

 タコせんちょうには、8本の足やスミ、たくさんの足がついているけどイカとは違うことなど、子どもの気になるタコの特徴が生かされていて、興味を持ってくれること間違いなし。筆者の4歳息子もすぐに覚えて、「タコせんちょうだ!」となりきり、ブロックでタコらしきものを作って遊んでいます。

 子どもっぽい素直な一面もかわいらしく、大人から見ても応援したくなるかわいさ! 読み聞かせをしていても楽しいですよ。

 これから入園や入学などで新しい環境に入っていくお子さんにぴったりの本書。友だちとすぐに喧嘩してしまうお子さんにも、「相手のお話も聞いてみたら? 意外と気が合うかもよ」「お友だちが知らないことを教えてあげるのもいいことだね」といったことを教えてあげられそうです。

文=麻布たぬ

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■『かいぞく タコせんちょう』  https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000346/

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