NiziUプロデューサーJ.Y. Park “虹プロ”で名言を生み出した彼の人生哲学とは?

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/28

J.Y. Park エッセイ 何のために生きるのか?
『J.Y. Park エッセイ 何のために生きるのか?』(J.Y. Park:著、米津篤八:訳/早川書房)

 昨年の“虹プロ”人気はすさまじかった。「Nizi Project」は、「TWICE」などを生み出した世界的プロデューサーJ.Y. Parkさんが、アイドルを目指す少女たちのダンスや歌を審査するアイドルオーディション番組。最終審査に合格したメンバーは「NiziU」としてデビューし、いきなりNHKの紅白歌合戦に出場するなど、まさに“社会現象”となった。

 人気の理由のひとつは、J.Y. Parkさんによる少女たちへの真摯なアドバイスにある。技術的な指摘だけでなく、真剣にステージに立つ少女たちの内面に寄り沿い、的確なアドバイスを伝える。その結果、彼女たちは自身の壁を乗り越え、番組を通じて成長していく。少女たちの魅力を引き出すJ.Y. Parkさんの言動は、タレント育成の枠にとどまらない“理想の上司”だと話題になった。

 どんな人生を送れば、あんな素敵な言葉が出てくるのだろう……。先日発売された彼のエッセイ『J.Y. Park エッセイ 何のために生きるのか?』(J.Y. Park:著、米津篤八:訳/早川書房)を読めば、その一端を垣間見ることができる。日本ではあまり知られていないデビュー前のことや、アーティストとしての活躍、そして芸能プロダクション「JYPエンターテインメント」の設立。彼の半生を追いかけていくと、「Nizi Project」での彼の言葉の意味も分かってくる。

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「世界で最も特別な男になる」 小学4年生で人生の目標を決めた

 歌手、プロデューサー、実業家……さまざまな肩書を持つJ.Y. Parkさん。彼を動かす原動力は「世界で最も特別な男になる」という目標だったという。小学4年生のときにペニーという女の子に恋をして以来、最高の女性に恋愛感情を届け、結ばれることが人生の目標になった。最高の女性に愛されるためには、自分自身もまた「特別な男」でなくてはならない。

 歌手としてデビューし、28歳で結婚。彼は見事にその夢をかなえるが、愛は永遠には続かなかった。彼は、40歳で最高の女性と離婚してしまう。そこから「何のために生きるのか?」を考えるようになっていく。本書は、J.Y. Parkさんが人生の目的を見失い、再びそれを見つけるまでの過程を描いている。

「真実」「誠実」「謙虚」…その意味は?

「Nizi Project」で印象に残っているシーンがある。J.Y. Parkさんが、メンバーたちに芸能界で生きていくための3つの心構えを説く場面だ。「真実」「誠実」「謙虚」――これはJ.Y. Parkさん自身の哲学であり、彼が率いるJYPエンターテインメントのアーティストに受け継がれている。たとえば、「真実」は次のような意味だ。

「真実」
人前で気を付けようとするのではなく、気を付ける必要のない人になること。

 そもそも週刊誌などで暴かれて困るようなことは、最初からしない、言わないということ。この考えの裏には、J.Y. Parkさんの、「成功者」ではなく「尊敬される人」になるという生き方がある。それは、彼自身が考え続け、本書のタイトルにもなっている「何のために生きるのか?」という問いとリンクしている。

 本稿で触れたのは、内容のほんの一部に過ぎない。現役の歌手としては初めて自らの事務所を作ったこと。妻と離婚した後、「何のために生きるのか?」を問い続け、答えを見つけたこと。アーティストとして長く活躍するための戦略。今のJ.Y. Parkさんを形作る仕事観、そして人生観が詰まっている。「Nizi Project」でJ.Y. Parkさんの“言葉”に惹かれたのなら、ぜひ本書で彼の内面に潜りこんでほしい。必ずや新たな発見があるはずだ。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7

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