本と本の自由を守るため図書館隊員は今日も戦う! 見ててね王子様!

小説・エッセイ

公開日:2012/8/5

図書館内乱 図書館戦争シリーズ(2)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:有川浩 価格:693円

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検閲を是とするメディア良化法が施行された世界、断固として検閲を拒否し書物とその自由を守る図書館。その攻防は物理的な戦闘に及ぶことも多いため、図書館では専守防衛の「図書隊」という部隊を組織している。ヒロイン笠原郁は、2年目のヒラ隊士。昔、危ないところを助けてくれた「王子様」が図書隊員だったことからこの道を志した乙女だが、天然ボケぶりと本への愛、そしてまっすぐな人柄が周囲に好かれ、今日も叱られながらも隊務に励んでいる。しかし問題は次から次へ……。大人気『図書館戦争』シリーズ第2弾。

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単なるベタ甘恋愛成長小説ではないことは、『図書館戦争』を読んだ読者ならすでにご承知の通り。検閲という読書好きにとっては背中が冷たくなるようなディストピアを舞台にした本シリーズは、社会の中でいかに信念を守れるかという問題が大前提にある。「キレイごとだけでは世の中動かない」という厳然たる事実に対し、「キレイごとのどこが悪い!」と正面突破する主人公の青さと若さと痛さと明るさが最大の魅力だ。青さ苦さ痛さが上司や同僚によって制御され薫陶を受け、身体も心も傷だらけになりながら、少しずつ経験値を上げていく様には「よし! がんばれ、チョーがんばれ!」と伴走しながらエールを送りたくなる。まあ脚力を考えればなまじの伴走者はすぐにぶっちぎられるだろうが。

本書は連作短編形式になっている。「両親撹乱大作戦」は戦闘員であることを親に隠していた郁のもとに両親が職場見学にやってくる話。なんとか職種を隠そうとするドタバタが楽しい一方で、現実の図書館でも行われているリファレンスサービスの内容と奥深さも綴られ、情報小説としても読ませる。「恋の障害」は郁の上司・小牧に思いを寄せる難聴の少女を描いた物語。差別とは何なのか、何をもって差別とするのかという、本シリーズのテーマに直結したラブストーリーだ。

ここまでが図書隊員の日常を描いたものなのに対し、「美女の微笑み」「兄と弟」「図書館の明日はどっちだ」はまさに戦いの記録。ただし検閲を行うメディア良化委員会との直接の戦いではなく、図書館内での派閥の戦いだ(だから書名が「内乱」なのだ)。その構図は一般企業小説どころか諜報小説もかくやという権謀術数が飛び交う。それをライトノベル特有の簡略化とデフォルメ、テンポのいい語り口でぐいぐく読ませるのだから恐れ入る。

未成年犯罪者の個人情報を載せた週刊誌を閲覧させるべきかどうか、書評サイトの攻撃的な悪口が何を招くか、障害者をひとくくりにして無理解のまま型にはめてないか──そういう社会的な大きな問題の中に、思い続けた王子様の正体を知って郁ビックリ、みたいなエピソードを混ぜ込み、読者を楽しませてくれる。郁以外のサブキャラたちの話も『図書館戦争』より多くなり、堂上教官、小牧教官、手塚や柴崎など、それぞれのキャラのファンもきっと大満足の1冊。


登場人物一覧にはこの巻からの新顔も

DVDーBOX初回限定版についていた短編の特別収録は本書にも。『ロマンシング・エイジ』