故・星野道夫氏の1枚の写真が絵本になった『あるヘラジカの物語』が、第2回「親子で読んでほしい絵本大賞」に決定!「こんなに心に響く絵本ははじめて」

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/27

あるヘラジカの物語
『あるヘラジカの物語』(著・イラスト:鈴木まもる、原案:星野道夫/あすなろ書房)

 大自然のドラマと生命のつながりを描いた『あるヘラジカの物語』が、優れた絵本を表彰する「第2回 親子で読んでほしい絵本大賞」の受賞作に決定。2021年3月16日(火)にその贈賞式が開催され、ネット上で「子どもに読ませてみたいです!」「壮絶な命の物語。まさに大賞にふさわしい作品。センスあるなぁ」「子どもに読み聞かせるとなると重すぎる気がするけど…あえて、手に取ってみてよかった。食い入るように読んでます!」といった反響を呼んでいる。

「親子で読んでほしい絵本大賞」は、司書や読み聞かせのボランティアなどで構成されたJPIC読書アドバイザークラブ(略称:JRAC)の投票によって決まる賞。今回は季刊誌『この本読んで!』2020年春号から冬号で紹介された400冊の新刊絵本を対象に、1年の歳月をかけて「親子で読んでほしい絵本」を選考した。

 大賞に輝いた『あるヘラジカの物語』は、写真家や探検家として活躍した故・星野道夫氏が残した1枚の写真を元に、絵本作家の鈴木まもるがストーリーを肉付けした書籍。星野氏と親交のあった鈴木はある夜、2頭のヘラジカの写真を夢に見て「絵本を創ろう」とひらめいたそう。その後、鈴木はアラスカに飛び、現地の取材を行ったという。

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鈴木まもる氏と星野直子氏(撮影/石川正勝)

 作中では大自然で暮らすオスのヘラジカによる激しい戦いや、動物たちの生態が丁寧に掘り下げられていく。同作の刊行について、星野道夫氏の夫人・直子氏は「ダミーをみた瞬間、素晴らしい絵本になると確信。写真に世界観と命が吹き込まれ、新たな作品が生まれた」と太鼓判を押している。

 また、読者からも大きな評判を呼んでおり、「星野さんの写真が好きで、気になり買いました。自然の厳しさが迫力のある絵で描かれている素晴らしい絵本でした」「こんなに心に響く絵本ははじめてです。この薄い絵本の中に、今の人間が、社会が忘れてしまった大切なことが詰まっています。子どもと一緒にもいいですが、大人こそ読むべき本な気もします」と絶賛する声が上がっていた。

 なお、同賞の2位にはジェシー・オリベロスによる絵本を翻訳した『とんでいった ふうせんは』がランクイン。3位には、大相撲の世界にとびこんだ少年の成長を描く『おれ、よびだしになる』が選ばれた。いずれも『あるヘラジカの物語』と同じく、「親子で読んでほしい絵本大賞」がきっかけで手に取ったという声が上がっているようだ。

 スマートフォンやゲームなど、さまざまな娯楽で溢れかえっている昨今。このような時代だからこそ、大自然のリアルや命の神秘が詰まった物語に触れてみてはいかがだろうか。

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