絵本からの問いかけを子どもと対話しながら読み進めてみたら…? 吉本所属の異色の絵本作家・ひろたあきらさん絵本第2弾『いちにち』

文芸・カルチャー

公開日:2021/4/9

いちにち
『いちにち』(ひろたあきら/KADOKAWA)

 昨年4月~5月のステイホーム期間中、みなさんは何をしていましたか? 筆者は4歳の息子とお絵描きにハマりました。いま思えば、わずかな期間での伸び率はすさまじく、今も続けていたら天才的な才能が芽生えていたかも、と思います。同じように、親子のおうち時間で子どもの新しい可能性を見つけた方はいるのではないでしょうか?

『いちにち』(KADOKAWA)は、前作『むれ』が「第12回MOE絵本屋さん大賞2019」で新人賞第1位を受賞した、吉本興業所属のお笑い芸人、ひろたあきらさんによる絵本第2弾。コロナ禍のステイホーム期間中に着想を得た1冊だとか。

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 本の中には1匹のさかなが登場します。さかなは1日のなかで、ご飯を食べたり絵を描いたりと、さまざまなことにチャレンジ。各ページには問いかけが綴られていて、子どもとの対話を楽しみながら読み進められます。

いちにち

 あるページでは、さかなが絵を描いていました。さかなには絵の才能があるそうです。「きょうはどんなえをかくのかな?」息子に問いかけると、こんなふうに言われました。

「それはぜってーわかんないよ」

 息子によれば、さかなが持っているのは赤色で、描かれている絵はみんな赤色だから、どれを描くのか限定できないというのです。

「おれだったら、あまくておいしいスイカを描くけどな」とのこと。

いちにち

 花に水をあげているページでは、つぼみがひとつだけ描かれています。「きょうは つぼみが ひらくかな?」という問いかけに対する息子の回答は、
「う〜ん、べつにひらかなくてもいいじゃない? ひらかなくても、お花はお花なんだから」。

いちにち

 さかながおやすみするページでは、「きょうは いいゆめ みられたかな?」と声をかけてみました。が、息子の回答はありません。見ると、絵をじっと見つめています。食いしん坊の息子のことなので、「夢の中ならソフトクリームやたい焼きがたらふく食べられるのか〜」と考えていたに違いありません。

 と、まあ最後は親の想像ですが、各ページの問いかけで、これまで聞いたことがないような大人っぽい答えや珍回答が出てきて驚かされました。

ユニークな絵が自由な発想を呼び起こす

 ここに描かれているのは、水槽の中にいるさかなが想像した1日の出来事。一見何もないように思える水槽の中で、さかなの想像した世界は果てしなく広がっていきます。

 どうして息子は聞いたこともない回答ばかりするのでしょうか? それはきっと、ひろたさんの描く絵があまりにユニークだからだと思います。さかなが思い描く世界は独創的で、それが子どもの心を刺激し、今までになかった思考が呼び起こされたのかもしれません。

 問いかけはあるけれど、答え合わせはなし。答えはすべて、本を読んだ子どもたちの頭のなかにあるのみ。ユニークな絵と問いかけの組み合わせで子どもの想像力を刺激する、脳トレみたいな絵本だなと感じました。

 問いかけるたびに回答が変わったりして、子どもの変化や成長を感じられるので親も楽しくなります。「今度はどこに行きたい?」「誰に会ってみたい?」という対話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

手の届くところにある楽しみを探してみたい

 本書を読んでいると、どこにも行けなかったけれど心は充実していた、昨年の息子とのおうち時間を思い出しました。旅行やレジャーもいいけれど、何もないと思えることにも楽しみは潜んでいるかもしれません。手の届くところにある大切なこと、もっと探してみたいなと感じました。

「想像」が生む「創造」。子どもの果てしない想像力があれば、とんでもなく面白い未来を引き寄せることができるかもしれない…そんなことを感じさせられる絵本でした。

文=麻布たぬ

『いちにち』ひろた あきら

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