『闇金ウシジマくん』作者の最新作が登場! 次の主人公「悪徳弁護士」はどんな活躍を見せる?

マンガ

公開日:2021/4/13

九条の大罪
『九条の大罪』(真鍋昌平/小学館)

 闇金融を題材に社会の暗部を描き切り衝撃を与えた『闇金ウシジマくん』。15年間の連載期間中、テレビドラマ化・映画化もされた作品である。最終巻の発売が決まった頃にはすでに累計発行部数が1700万部を突破しており、惜しまれつつ幕を下ろした。

 作者の真鍋昌平さんは、2020年、『週刊ビッグコミックスピリッツ』で新連載『九条の大罪』を始めた。主人公は「悪徳弁護士」と呼ばれている九条だ。この男は一筋縄ではいかない。同情の余地のない人間の弁護を務める。タイトルのとおり、大罪を犯している弁護士のように見える。

 だが、1巻中盤まで読むと、この主人公九条が本当に「悪い」弁護士と言えるのか、わからなくなってくる。

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“私は法律と道徳は分けて考えている。
道徳上 許しがたいことでも、依頼者を擁護するのが弁護士の使命だ。”

“法律は人の権利を守る。
だが、命までは守れない。”

 九条は大金を稼いでいる。しかし彼の全財産はすべて離婚した元妻に支払われ、子どもの養育費にも使われているという。彼自身はビルの屋上にテントを張り、生活費や食費を切り詰めて生活しているのだ。

 九条の目は時折やさしくなる。「どうしてそんな奴の味方をするのか」と言いたくなるような人ばかり弁護しているのに、なぜ弱者に対してやさしい目を向けられるのだろうか。

 そして本作でもっとも注目したいのは、大きな恐怖や想定外の困難に遭遇したときの登場人物の行動だ。

 本作に登場するある事件では、弁護士をつける場合とつけない場合で6000万円も交渉できる額が異なる場合がある、と九条は述べる。弁護士を雇う初期費用を渋ったために、より大きな痛手を負うことは現実世界でもありうる。作中では辛い場面も多いが、そのぶん説得力がある。読者は緊急事態が起こる前に、あらかじめ知識を得ておくことの重要性を再認識できるのだ。

 高い目標を掲げ、まい進する高潔な弁護士もいれば、九条のように思想と法律を切り離して考えている弁護士もいる。だが、それに対して「いい」「悪い」と断じることは法律の素人にはできないだろう。

 本作を読むと、弁護士を雇うメリットや社会的に苦しい立場にある人たちをどうすれば救えるのかを想像できる。どんな立場の人間でも、絶望に打ちひしがれると目の前が真っ暗になる。しかし、絶望する前に、自らを救う手立てとなる「何か」を見つけられれば、その後の人生は大きく変わるはずだ。

『九条の大罪』は決して後味の良い漫画ではない。だが、読者の想像力しだいで人生に役立てることができる。この点は『闇金ウシジマくん』と共通しているようにも受け取れる。

 九条は謎めいているが、「悪」と決めつけることはまだできない。そのことを心に留めつつ、ぜひ読んでほしい。

文=若林理央

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