生き方、価値観の多様化でこれからの結婚はどうなっていくのか?「婚難」のリアルに迫る

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公開日:2021/4/10

ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア。
『ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』(筋野茜、尾原佐和子、井上詞子/光文社)

 私たちは結婚できなくなったのか、それともしなくなったのか。

 50歳までに一度も結婚したことのない人の割合(かつて「生涯未婚率」と呼ばれた)は、上昇が続いているとか。生き方が多様になっている今、結婚への価値観もかつてないほどに大きく変わっている。言えるのは、現代において結婚は幸せの条件ではなくなっているということだ。

 一方で、制度には依然として不備がある。2021年には、同性婚を認めないことを違憲とする初の判決が出た。今後も変わっていく余地があるだろう。結婚しなくても幸せになれる時代であっても、望む人が結婚できない社会は不健全ではないか。

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『ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』(筋野茜、尾原佐和子、井上詞子/光文社)は、共同通信社の連載「婚難の中で」をもとに追加取材・加筆して構成された書籍だ。3名の記者が、「困難」をもじった「婚難」を追ったものである。

 本書は「寺コン」の紹介から始まる。現代の婚活は、お寺で行われるのだ。「説法のプロ」である住職が場を和ませ、お寺に対する信頼感もあいまって人気を博しているという。お寺としては、「寺離れ」が進む時代に、若い世代の力になることによって彼ら彼女らとの接点を作りたい。考えてみれば、お寺はもともとまちのサードプレイス(家でも職場でもない、第三の居場所)としての機能を持っていたはずで、婚活の場となるのは、自然な流れなのかもしれない。

 寺コンに参加した就職氷河期世代のとある女性は、「結婚と就活は似ている」と言う。自分では決められず、相手の判断に委ねることになる。断られた理由もわからず、ショックを受ける。女性は、派遣切りに遭ったり、非正規雇用で自身に合わない仕事をしたりしてきたが、果たして彼女が「悪い」のだろうか。

 内閣府の意識調査によると、「どのような状況になれば結婚すると思うか」という質問に最も多かった回答は「経済的に余裕ができること」だった。社会的要因は、結婚に大きな影響を与えることが調査からもわかる。

 いま最大の社会的要因となっているのはコロナ禍だろう。婚姻数は激減したが、「オンライン婚活」が一部で活況だ。Zoomを用いたオンラインパーティーで出会ってオンラインで交流を続け、会ったその日にプロポーズが実ったカップルもいる。

 その他にも「夢見るシニア」「悩む親たち」「母になりたい」といった章で、横断的に現代の「婚難」を切り取るのが本書だ。果たして、これからの結婚はどうなっていくのだろうか。

文=遠藤光太

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