児童文学とあなどるなかれ! 大人の心にこそ沁みる、シリーズ第1作

小説・エッセイ

2012/8/7

クレヨン王国の十二か月

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:福永令三 価格:540円

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先日、思いがけず酒席で盛り上がったのがこの「クレヨン王国」シリーズ。世代も性別も違うお相手でしたが、とにかくこのシリーズはおもしろかった、けっこうシビアな話が多くて衝撃だった、子供目線の大人の話だ、というような話をしていたらば、案の定、読み直したくてたまらなくなっていたところへ電子書籍を発見、即購入というわけです。

好きだった作品はいろいろあって、『12妖怪の結婚式』『109番めのドア』『月のたまご』……どれもけっこう、小学生ながらに「え……そんな展開……?」と衝撃を受けるくらいなんていうか“子どもらしくない”お話ばかり。それに比べるとこの第1作『クレヨン王国の12か月』は、わりとやさしめ。
クレヨン王国のゴールデン王様が、シルバー王妃にいやけがさして家出。ちらかしぐせ、おねぼう、じまんや、いじっぱり、人のせいにする……という12の悪癖を治すまでは戻らない! というわけです。王様が年内に戻らなければ王国が崩壊して世界が滅びてしまう、困った困ったと閣議をする大臣たちを見つけた7歳のユカが、シルバー王妃のおともとして旅立つことになるわけですが。

1月から12月までの国をめぐっていくにつれて、王妃はひとつずつ自分の悪癖のしっぺがえしをくらい、反省していくので、一見したところ、こどもに「こんなことしてはいけませんよ」と伝えるための道徳本のようにも読めます。……が。よく読んでみてください。7歳のユカはわりとまっとうで“いい子”なんですよ。うそもつかないし、人のせいにしたりもしない。いつだってシルバー王妃を宥めてる。そう、物語のスタートにあるとおり、諸悪(というほどでもないけど)の根源は王妃さまなのです。読んでいくとですね、けっこう、こちらの身につまされるような展開が多くって……。癇癪をおこして「あんたが悪いのよ!」と当り散らしたり、いやなことがあったときに「あいつが仕組んだに違いない!」と疑ってみたり。身に覚え、ありませんか?

ファンシーで、不思議なクレヨン王国を舞台にした童話なので、さらりと旅する気分で読むにも、もちろん楽しい。だけどやっぱりここにも、福永さんのちょっとした、毒といいますか、ちくりと刺すような警告があるような気がします。
すぐれた児童文学ってやっぱり、大人になってから読みかえしてこそ真価を発揮する気がします。子どもには楽しい、大人になると沁みる。クレヨン王国も、そんな作品のひとつ。いくつかシリーズが電子化しているので、気になるものから是非、読み始めてはいかがでしょう。


ちゃんとイラストも掲載されているのも、懐かしくてうれしい

王妃さまの12の悪癖。並べてみると、けっこうなものです

せっかく王さまを見つけたのに、自分の行いによって王妃さまはしっぺがえしをくらいます

こんなふうに喧嘩したこと、ありませんか?