“夢の在り処”を模索する舞台は閉店危機の百貨店。2018年本屋大賞ノミネート作品! 村山早紀の『百貨の魔法』が文庫化!

小説・エッセイ

公開日:2021/4/21

百貨の魔法
『百貨の魔法』(村山早紀/ポプラ社)

『シェーラ姫の冒険』『風の丘のルルー』『コンビニたそがれ堂』など数々の名作を生み出し、子どもから大人まで幅広い読者を持つ村山早紀。そんな彼女の「2018年本屋大賞」ノミネート作である『百貨の魔法』(ポプラ社)が文庫化され、2021年4月7日(水)に発売された。

 同作の舞台となった星野百貨店は、村山が構想する“風早”の街に軒を連ねている百貨店。「2017年本屋大賞」にノミネートされた『桜風堂ものがたり』の作中では、銀河堂書店がテナントとして入っていた百貨店として登場しているため、読者の中でもすでに有名な百貨店として知られている。

 物語は、第一幕から終幕まで6つのストーリーで構成。星野百貨店と共に生きるスタッフや創業者の一族、お客様の目線で話が展開していく仕様だ。第一幕は村山が「百貨店がきらめきを放っていた頃の象徴的な存在」と語るエレベーターガール・いさなの話から幕を開ける。

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 ただ星野百貨店は、今でもお客様で賑わう場所かというと、そうではない。現代の百貨店が置かれている赤字や、閉店、業界再編などの危機的状況が丁寧に描かれた等身大の百貨店物語なのだ。「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う中、いさなやインフォメーションのリーダー、資料室のスタッフなど、登場人物を通してそれぞれの夢の在り処を探していく──。

 ほっこりとした舞台と、登場人物の心情が丁寧に掬い上げられた『百貨の魔法』に、ファンからは「わたしが小さい頃、百貨店は紛れもない“夢の空間”でした。百貨店冬の時代とも言われる中で、伝統を繋いでいこうとする温かな心が沁みてきました」「村山さんの人柄が感じられる美しい物語でした」「現実世界にありそうでない話。優しい世界の物語に浸りたい方におすすめです」「一章ごとに主人公が変わるが、終盤にかけてエピソードがつながり始めるのでとっても読み応えがある!」といった感想が寄せられている。

 村山とともに作品の舞台である“風早”に想いを馳せてきたファンはもちろん、彼女が紡ぐ心温まるストーリーの魔法にかかってみたい方は、この機会にぜひ同書をチェックしてみてほしい。