熾烈な受験戦争は思わぬ不幸を生み出した。セレブ妻たちを描き社会現象を巻き起こした韓国ドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』

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更新日:2021/4/25

SKYキャッスル~上流階級の妻たち~
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 近年韓国で一大シンドロームとなったドラマがある。『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』だ。第1話が放送された当初は国内視聴率は1.7%だったものの、そのスリリングな内容やドラマで描かれる韓国社会のリアルな一面や風刺が話題を呼び、視聴率も急上昇。最高で23.8%を記録し「第55回百想芸術大賞」でも4冠(演出賞・最優秀演技賞・助演賞・新人演技賞)を獲得するなど、社会的な現象を巻き起こした。

 作品の舞台は、タイトルにある「SKYキャッスル」という、国内でたった0.1%の富裕層しか住めないと言われている高級住宅街だ。主人公は、そこに整形外科医の夫と2人の娘と暮らす専業主婦のハン・ソジン。そして物語は、隣の家に住むイ・ミョンジュの息子がソウル医大に合格したという知らせが入るところから始まる。

 SKYキャッスルに暮らす住民たちは、なんとか彼の入試関連の資料を手に入れようと画策する。とにかく彼らは自分の子どもたちをソウル医大に合格させるために必死である。それが富豪であり続けるために必要なことなのだろうし、親の威厳を保つためにも重要なことなのだろう。ドラマを観ていると、子どもの気持ちなどおかまいなしに奮闘している親の姿に、なんとも言えない気分になってしまう。

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 無事ひとり息子をソウル医大に合格させたミョンジュの一家はそういう意味では安泰だ。ミョンジュの夫で神経外科医のパク・スチャンは院長の未来を見据えていて、妻を大切にしている一面を見せる。息子はイケメンで謙虚で非の打ち所が何ひとつない。皆、ミョンジュの一家が理想の家庭だと考える。

 しかし、このドラマは序盤で視聴者の想定していない方向に物語の舵を切る。

 息子の合格祝いということで、夫からクルーズ旅行のチケットをもらったミョンジュだったが、旅行を早くに切り上げて家に帰ってきてしまう。なんだか様子がおかしいミョンジュは、その後夫スチャンの猟銃で謎の自殺を遂げるのであった。また、夫はその後逃げるように病院を辞め、家も出て行ってしまう。

 全てが順風満帆のように思えていた一家が、なぜ?

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 謎は謎を呼び続ける。ミョンジュ一家が去った後に引っ越してきた童話作家のイ・スイムは、ソジンの顔を見て「ミヒャン」と別の名前で呼ぶ。明らかに動揺するソジン。彼女にもまた、誰にも言えない秘密の過去が存在した。

 度々格差が指摘される韓国社会において、学歴や熾烈な受験争いをここまで生々しく描くドラマは視聴者の心にどのように響いたのか。正義感の強いイ・スイムが引っ越してきたことで、SKYキャッスルの看過されてきた闇が次第に暴かれ、さまざまな人間関係が絡み合いながら物語は思わぬ方向へと展開していく。

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 とにかく出てくる登場人物が皆利己主義の塊のように見える人たちで、彼らが交わす会話は常に腹の底に何か抱えているようなスリリングさがある。それでいて、どこかで親の情を捨てきれず、受験戦争に子どもを勝たせたい気持ちと子どもに無理をさせている自分との葛藤が生まれる瞬間など、人間臭い部分も時折現れる。

 果たして物語がどのように収束するのか、まったく読めないままストーリーが展開していくので目が離せない作品だ。

文=園田もなか

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