満員電車、高い家賃とはさようなら? コロナ移住のリアルに迫る

暮らし

公開日:2021/4/24

東京を捨てる コロナ移住のリアル
『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(澤田晃宏/中央公論新社)

 今、コロナ移住がアツい。『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(澤田晃宏/中央公論新社)は、コロナ禍で実際に移住したジャーナリストの澤田晃宏さんが、移住者や移住支援団体、地方自治体などへの取材を重ね、コロナ移住の酸いも甘いも赤裸々に綴る。

 東京などの都会に住む人々にとって、満員電車、高い家賃、さらにコロナ解雇といった不満要素は大きい。また、職種によってはどこに住んでいてもリモートワークで十分だということが明らかになってきている。つまり、数々の不満を抱えながらでも都市部に住むことの意味が薄れてきているのだ。23区の若者の約4割が移住に関心を持っているという。

 都内のタワーマンションに住んでいたとある家族は、群馬県桐生市に移住した。仕事は夫婦ともにほとんどリモートワークで、移住しても続けられた。家賃は10万円ほど下がったという。子どもは田んぼのカエルやトンボを追い回し、近所の野菜の収穫も手伝う。タワマンに住んでいた頃のように、子どもが走り回る足音を気にする必要はもうなくなった。

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 一方で、別の夫婦は貯金が少なく、移住先の敷金を支払うと貯金がゼロに近くなっていた。政府の移住支援金をあてにしていたが、支援金の条件に含まれている「マッチングサイトに掲載された企業への就職」でつまずいた。求人数が少なく、条件に合う仕事が見つからなかったのだ。夫婦はどうなってしまうのか。

 澤田さん自身は、週刊誌記者を経てフリージャーナリストになり、コロナ禍に東京から淡路島へ移住した。家賃は4万6000円下がり、駐車場代込みの一軒家に住んでいる。車両費や光熱費など上がっている費用もあるものの、「縁故米」など「見えない収入」がある。縁故米とは、農家から直接購入する米のことで、澤田さんは30kg7000円という破格で買っているそうだ。負の側面としては、医療や教育などの生活インフラが手薄であることを挙げる。医療は都市部に偏重していて、全国の市町村の4分の1には高校がない。

「地域おこし協力隊」や「半農半X」、「空き家バンク」などを取材し、実際に移住するときにどんな未来が待っているのかを伝える本書。実体験と取材に基づいた「コロナ移住のリアル」は、「このままの暮らしでいいのか?」と疑問を抱えるあなたの参考になるはずだ。

文=遠藤光太

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