その疲労感は脳の炎症が原因!? いつも疲れている人は、もしかしたらHSP気質かも?

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公開日:2021/5/11

敏感すぎる人のいつものしんどい疲れがすーっとラクになる本
『敏感すぎる人のいつものしんどい疲れがすーっとラクになる本』(長沼睦雄/永岡書店)

 いくら休んでも疲れが取れない、原因がわからない痛みや発熱がある……。こうした症状に悩む人は多い。『敏感すぎる人のいつものしんどい疲れがすーっとラクになる本』(長沼睦雄/永岡書店)は、HSP(Highly Sensitive Person、非常に敏感な人のこと)の臨床医である長沼睦雄氏が、長引く疲労感とHSPとの関係を書いた一冊。また、近年の医学的前進を受けたものでもある。ここでいう医学的前進とは、医療機器の精密度が上がったことにより、慢性的な疲労感の正体は、肉体の実質的な疲労だけでなく、「脳の慢性炎症」が大きく関係していることが解明されたことだ。本書から、慢性疲労の正体と対策法を探っていこう。

 まずは、体がストレスに対処する仕組みをなぞっておく。

 本書によると、体はストレスを感じると、脳の視床下部から下垂体を介して副腎に指令が出る。指令に従って、副腎はアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどのストレスホルモンを出す。すると、肉体の各部署が戦闘態勢に入るとともに、脳内でもミクログリアという脳内免疫にかかわる細胞が、炎症性サイトカインや活性酸素を放出する。体の体温と血圧を上げ、脳内でも自らの脳細胞を守る態勢に入るのだそう。

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 この戦闘が長く続くと細胞たちが疲弊し、さらに脳では、神経細胞の感度が狂い、正常な脳細胞も攻撃されると著者は述べる。戦闘命令が止まず、現場が誤作動を起こしだすほどの状態、これが「脳の慢性炎症」だ。この結果、脳が周囲からの刺激を実際よりも大きく受け取ってしまう、思考が鈍る、疲労感がどんなに寝ても取れない、常に体のどこかが痛い、体が鉛のように重いなどの症状が現れるのだとか。

 今は疲労感がひどくなくても、年中慢性的に疲れていて休日は一日寝ているという人は注意が必要と著者。ストレスの原因が一時的なものなら、原因への自覚がある場合がほとんどなので、誰かに相談するなどの対策が取れるうえ、ストレッサーが消えればいいはずだ。慢性的疲れにまで到っているということは、対策を取らずにただ我慢し続けている、もしくは原因への自覚がないのではないだろうか。これでは、脳の炎症を鎮めるどころか、ますます広げてしまうと述べている。

 こうなった場合どうすればいいのだろうか? 医者に行けば脳の炎症を取ってもらえるだろうか? 残念ながら、風邪に対処するような方法は現在のところ存在しないと著者。そこで、「ストレスになる環境から離れる」「食生活の改善」「マインドフルネス」など日常生活でできる回復へのアドバイスが載っている。詳細は本書に譲りたいが、とにかくストレス対策を打つべきであるという。

 もし、ストレスの原因に自覚がないという場合は、自身の感覚に注意を向けてほしい。著者によると、「あなたはHSP気質ではないですか?」だ。光、音、匂い、人の感情、場の雰囲気などを人より強く感じ取る「感覚情報処理の過敏性」をもち、社会全体の約20%の人が該当するとのこと。社会は約80%の非HSPを前提に成り立っているので、HSPは自身の感覚器官では処理が追いつかない過剰な刺激を、日々受け取っていることになる。

 特に日本は、家庭のしつけや学校において、人と同じにできること、「普通」であることが求められがちだ。個人の体質やちょっとした疲れは無視されてしまう傾向もある。ストレスとなる原因は思い当たらないが、慢性的疲労感が続いているなら、一度自身の気質を考えてみてもいいかもしれない。春は新生活で疲れが溜まりやすい季節。頑張って「普通」でいることより、自分の快適さを追求することを自身に許そうではないか。

文=奥みんす

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