腸を元気にしてストレスを解消!? 意外な便秘改善情報と腸のストレスチェックも【チェックシート付き】

健康・美容

公開日:2021/4/30

大丈夫!何とかなります ストレスは解消できる
『大丈夫!何とかなります ストレスは解消できる』(松生恒夫/主婦の友社)

 現代社会においてストレスなしに生きることは難しい。ストレスとの向き合い方を提案する情報がちまたにあふれているが、そんな簡単に解決できないのが実情だ。ストレスは、ストレス。辛いものは、辛い。

 そこで発想をちょっと変えてみたい。ストレスで心が辛いならば、体からアプローチしてみよう。たとえば「腸のストレス」を減らすことで、脳や心に元気を与えることはできないだろうか。

『大丈夫! 何とかなります ストレスは解消できる』(松生恒夫/主婦の友社)は、腸を元気にすることで、心のストレスを減らすことを提案する本だ。著者は、医学博士で松生クリニック院長の松生恒夫先生。腸を専門にするお医者さんだ。

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脳腸相関の不思議

 松生先生は「ストレスに負けない体を作るカギとなるのが、腸です」と述べる。腸には約1億個もの神経細胞があるといわれ、脳の神経細胞(約150億個)に次いで、2番目に多い。そのため「腸は第二の脳である」といわれるようになった。

 脳内の神経伝達物質「セロトニン」も、実は大半が腸内で作られている。セロトニンは精神を安定させる働きがあるので、「しあわせホルモン」とも呼ばれており、この分泌量が低下するとイライラしたり、不安が高まったり、ときにはうつ病の因子になったりするという。

 セロトニンは脳内でも作られているのだが、全体の割合はわずか1%。大半を占める95%は、腸内で作られて、腸管全体の情報伝達を担っているのだ。

 ただし腸内で作られたセロトニンが、脳内に移動できるわけではない。そのため脳と腸のセロトニンの関連性は、医学的に証明されていない。それでも松生先生は「うつ病の患者さんの中には、便秘など胃腸の不調を訴える人が少なくないので、脳と腸の間に何らかの関係があることは推測できる」と述べている。

 また本書には、「腸内環境が整って、便秘がよくなったら、抗うつ薬も減らせた!」という実例が紹介されている。うつ病に苦しむ50代の女性が、松生先生の指導で腸内環境の改善に取り組んだら、便秘がよくなっただけでなく、抗うつ薬の量も減らせたというのである。

 さらに近年では「脳腸相関」という言葉も飛び交うようになり、それだけ脳と腸が密接に結びついていることを、医学に携わる人々は感じ取っているようだ。ストレスに負けない体を作るカギとして、腸を元気にすることは、かなり真実味を帯びた提案ではないかと思われる。

健康食である玄米や一部の野菜の食べ過ぎは便秘悪化の一因になる!?

 ここで気になるのが、腸を元気にする具体的な方法だろう。本書ではその実践法を、これでもか! というぐらい紹介しているので、本稿ではその一部だけご紹介したい。

 まず玄米菜食を見直そう。健康意識の高い人たちの間で、玄米菜食を徹底した食事療法「マクロビオティック」が注目されている。たしかに糖尿病や大腸がんに有効だといわれているようだが、ごぼう・にんじん・かぼちゃなど不溶性食物繊維を含む野菜、そして玄米は、消化に悪いという。

 そのためすでにお腹の調子がすぐれない人、便秘に悩んでいる人がこれらを食べ過ぎてしまうと、胃腸にさらなる負担をかける。不溶性食物繊維は便を硬くする性質があるので、便秘が悪化する可能性もある。

 玄米や野菜は素晴らしい食材なので、食べること自体は悪くない。だから胃腸の負担を減らすためにも、水分を多めにとり、果物・なめこ・海藻類などで水溶性食物繊維も一緒に食べるようにしよう。

ヨーグルトじゃなくて漬け物を食べたほうがいい?

 腸を元気にするイメージのあるヨーグルトも見直すべきであるという。腸によいとされる乳酸菌は、植物性と動物性の、2種類に大きく分けられる。種類にもよるが、一般的に動物性乳酸菌の多くは胃液や腸液で死滅してしまうので、我々がイメージするほど「ヨーグルトが腸の健康によい」とは言い切れない。

 さらにヨーグルトは高脂肪摂取になり、腸に負担をかける心配もあるので、「日本人には植物性乳酸菌のほうが合っているのではないか」と松生先生は考える。植物性乳酸菌は胃腸を通過しても死滅しにくく、生きたまま大腸まで届くことも利点だ。

 植物性乳酸菌を含む食べ物は、漬け物、みそ、しょうゆ、キムチ、ザーサイなどだ。もちろん人それぞれ体質があるので、ヨーグルトが絶対にダメというわけではない。色々な食材を試して、自分に合った乳酸菌食材を見つけてほしい。

やっぱりビタミンCはすごかった

 ビタミンCは美肌の栄養素というイメージが強い。しかし、このビタミンのすごさは、これだけじゃない。まず、ビタミンCが腸内で分解されるときに発生するガスが、消化活動のひとつ「蠕動運動」を活発にしてくれる。早い話が、便秘の素晴らしい味方なのだ。

 さらにドーパミンなど抗ストレス物質の合成にも欠かせない。ストレスが増えたとき、脳内で抗ストレス物質が大量に作られるので、ビタミンCが不足してしまう。

 だからビタミンCは積極的にとろう。ただしサプリメントでとり過ぎてしまうと下痢の原因となるので、食事からとるのがベター。赤ピーマン、芽キャベツ、ブロッコリー、かぼちゃ、キウイ、いちごなどの食材に多く含まれている。ただしビタミンCは水に溶けてしまうので、調理のときに気をつけるべし。

腸のストレス具合をはかるセルフチェックシート

 このほか腸を元気にする方法をたくさん紹介する本書。本稿の最後に、腸のストレス具合を簡単に知ることができるセルフチェックシートを掲載する。

大丈夫!何とかなります ストレスは解消できる P52-53

大丈夫!何とかなります ストレスは解消できる P54-55

 チェック項目が増えるほど、腸がストレスを抱えている可能性がある。ストレス腸が気になった人は、ぜひ本書を読んで、腸内環境の改善を実践してほしい。もしかすると松生先生が本書で述べているように、ストレス腸を改善することで、辛いストレスも和らぐ可能性がある。腸を健康にすると、心も健康になるかもしれないので、誰もがやって損なしのストレス対策なのである。

文=いのうえゆきひろ